本作品は、著者が第28回江戸川乱歩賞(1982年)に史上最年少で最終候補となった作品です。
著者と同世代の私は、当時、乱歩賞の選評を読んで、自分と同じ高校生で最終候補とはすごい、是非どんな作品なのか読んでみたいという気持ちに駆られたのを憶えています。
しかし、本作品がすぐに出版されることはなく、最近になって「
図説 密室ミステリの迷宮 (洋泉社MOOK)
」を読んで、文庫化されていることを知ったのでした。
中学を卒業したばかりの笹岡保理と丹崎恵は、妖魔の森に迷い込み、そこで出会った老人によって、少女漫画「ローウェル城の密室」の世界に入っていく。
ホーリー・ローウェルとメグ・マーシャルという作中人物となった二人は、城の北塔の一室で、王子の花嫁候補エローラ・グフィンが惨殺されるという、「密室殺人事件」に遭遇することに…。
小説中の人物が、作品と同題名の漫画の登場人物になってしまう、という設定が、当時の乱歩賞の選者達にどのように受け止められたかは分かりませんが、この作品の「核」は何といっても「密室トリック」だと思いますので、その印象を述べます。
私は、このトリック、ある箇所で、何となく想像がついてしまいました。
確かに独創的なトリックです。
カーやクイーン、横溝や鮎川などの内外のミステリの巨匠たちが思いつきもしなかったであろうトリックであることは間違いありません。
でも、著者と同年代の私には、それほど突拍子もない発想とは言えなかったのも確か。
ある種の時代性と言いましょうか、昭和30年代以降に生まれた方なら、ましてや、現在20代から30代の方なら、「気づいてしまうのでは」という気がしました。
とは言っても、その独自性を10代でミステリ小説に仕立て上げた著者の力量は、並々ならぬものがあります。「密室ミステリ」好きならば、一読の価値はある作品だと思います。
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ローウェル城の密室 (ハルキ文庫 こ 2-1) 文庫 – 1998/5/1
小森 健太朗
(著)
「三次元物体二次元変換器...」森に迷い込んでしまった丹崎恵と笹岡保理の前に現れた不気味な老人は確かにそう言った。訳のわからぬ二人だったが、次に気付いたときには、二次元の世界へと入り込んでいたのだ──少女漫画『ローウェル城の密室』の登場人物、メグとホーリーとして。漫画の世界の中で二人は恐るべき密室殺人に巻き込まれる...。驚天動地のトリックで乱歩賞最終候補作となった超本格ミステリー!(解説・鷹城 宏)
- 本の長さ420ページ
- 言語日本語
- 出版社角川春樹事務所
- 発売日1998/5/1
- ISBN-104894564041
- ISBN-13978-4894564046
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登録情報
- 出版社 : 角川春樹事務所 (1998/5/1)
- 発売日 : 1998/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 420ページ
- ISBN-10 : 4894564041
- ISBN-13 : 978-4894564046
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,007,810位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
トリックを知ったとき、鳥肌が立ちました。
こんな方法、この作者さんしか思いつかないでしょ。
べた褒めか発狂のどちらかでしょうね。
勿論、私は前者です。
こんな方法、この作者さんしか思いつかないでしょ。
べた褒めか発狂のどちらかでしょうね。
勿論、私は前者です。
2021年3月19日に日本でレビュー済み
史上最年少で江戸川乱歩賞の最終選考に残ったという。物語は、ライトノベルのように軽やかに進む。密室トリックなのだが、正直、笑った。納得もしていない。ただ、著者がまったく新しいものに果敢に挑戦し、それを描き切ったところに敬意を表したい。
賛否があるのは、そもそも著者の狙いだろうし、そういう意味でも試みは成功と言っていいのだろう。これを、乱歩賞の最終選考に残した当時の担当者の度量に感謝である。
賛否があるのは、そもそも著者の狙いだろうし、そういう意味でも試みは成功と言っていいのだろう。これを、乱歩賞の最終選考に残した当時の担当者の度量に感謝である。
2015年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第28回江戸川乱歩賞/候補作品
「高沢則子著」で応募して騒がれた作品なので良く覚えています。
早々に送って頂いたので今日はじっくり読みたいと思います。
「小森健太朗」とは、推理ですね!
「ありがとうございました。」
「高沢則子著」で応募して騒がれた作品なので良く覚えています。
早々に送って頂いたので今日はじっくり読みたいと思います。
「小森健太朗」とは、推理ですね!
「ありがとうございました。」
2004年4月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「10代の著者による本書が当時乱歩賞最終候補に残った」との触れ込みに期待し購入しました。
期待外れもいいところでした。
・序盤: 少女漫画風の無意味な描写が延々と続く。冗長。
・中盤: 無味乾燥な事情聴取が続く。冗長。
・終盤: 「驚天動地のトリック」...即座に破り捨てた。
特に序盤と中盤の作風がまるで異なるため、あたかも複数の著者による合作のように感じました。
あまりに稚拙なトリックに怒りを覚えて破り捨ててしまいましたが、1回読んだだけだったのでアマゾンで売ればよかった、と今思います。
不要な部分は次々と読み飛ばしたので読了まで要したのは1時間。
それでも無駄な時間をつかってしまったと反省しきりです。
「とにかく期待を裏切られたい」という方にはおすすめ。
期待外れもいいところでした。
・序盤: 少女漫画風の無意味な描写が延々と続く。冗長。
・中盤: 無味乾燥な事情聴取が続く。冗長。
・終盤: 「驚天動地のトリック」...即座に破り捨てた。
特に序盤と中盤の作風がまるで異なるため、あたかも複数の著者による合作のように感じました。
あまりに稚拙なトリックに怒りを覚えて破り捨ててしまいましたが、1回読んだだけだったのでアマゾンで売ればよかった、と今思います。
不要な部分は次々と読み飛ばしたので読了まで要したのは1時間。
それでも無駄な時間をつかってしまったと反省しきりです。
「とにかく期待を裏切られたい」という方にはおすすめ。
2003年8月5日に日本でレビュー済み
「密室」と銘打ってる訳で、つまりは密室殺人の謎がトリックとしてはメインである事に違いないのですが。然しそれを見抜ける読者など、まあ居たら心から敬意を表したい。本当。
乱歩賞の候補に挙げられたという作品。ですが肝心の密室の謎に挑むのは、物語が半ばをとっくに過ぎてからですな。それまでは、捩れ気味の冒険談が長い事繰り広げられます。この部分が長過ぎる、という理由で受賞は見送られたそうです。でも僕は好きですねえ。因みに結末が異なるバージョンも幾つか存在するとの事。
乱歩賞の候補に挙げられたという作品。ですが肝心の密室の謎に挑むのは、物語が半ばをとっくに過ぎてからですな。それまでは、捩れ気味の冒険談が長い事繰り広げられます。この部分が長過ぎる、という理由で受賞は見送られたそうです。でも僕は好きですねえ。因みに結末が異なるバージョンも幾つか存在するとの事。
2010年10月29日に日本でレビュー済み
1995年に出版芸術社から出た単行本の文庫化。
著者が16歳のときに執筆され、江戸川乱歩賞の最終選考に残ったことで有名な作品。
江戸川乱歩賞応募原稿、コミケ出品原稿、出版芸術社/角川春樹事務所版と、実は結末が3種類あるらしい。
評価が難しいミステリだ。根幹となるトリックはくだらないと言ってしまえばそれまでだが、着想としては面白い。最初から、トリックはこのへんにありますよよというのが明示されているのだが、さすがにこれは予測できなかった。ある意味、びっくりした。でも、心の別の部分では納得させられた。
しかし、やっぱり駄目なトリックかも。読むには一種の覚悟が必要。
著者が16歳のときに執筆され、江戸川乱歩賞の最終選考に残ったことで有名な作品。
江戸川乱歩賞応募原稿、コミケ出品原稿、出版芸術社/角川春樹事務所版と、実は結末が3種類あるらしい。
評価が難しいミステリだ。根幹となるトリックはくだらないと言ってしまえばそれまでだが、着想としては面白い。最初から、トリックはこのへんにありますよよというのが明示されているのだが、さすがにこれは予測できなかった。ある意味、びっくりした。でも、心の別の部分では納得させられた。
しかし、やっぱり駄目なトリックかも。読むには一種の覚悟が必要。
2003年8月24日に日本でレビュー済み
とんでもない発想に完敗です。 推理小説を読みなれていない私でもさくさく読めました。 ただ、少しあらけずりです。そこがまたいいとは言えますが。
本格推理小説、みたいなものを普段から読んでいる人には、どうなのかわかりません。
本格推理小説、みたいなものを普段から読んでいる人には、どうなのかわかりません。