Mathematicaで大域微分幾何学を扱ったもので、曲線上の動標構の動きはまるで宇宙旅行を髣髴とさせるロマンに満ちた鳥肌ものだ。
平面上、空間上の動標構の移動に伴い、接触円の中心と半径が刻々と移り変わる様はまさしく圧巻です。
図2.4の平面図形のPlotは大変面白く、x座標 y座標を次々変えると何時間も遊んでいられます。
第1章 準備の章末問題(B)をMathematicaで実行して見れば、既に数学はMathematicaの新時代に突入した事実を否が応でも認識せざるを得ないでしょう!例えばp20 問1-12は波が数学的に作り出せる事を示しています。
記述は大変丁寧で分かり易く、問題の解答も含めて数学的に厳密に証明されている。著者の性格の故か?初心者への細かい配慮が窺えます。冒頭の逆関数の定理の説明は今まで見た中で一番分かり易い。
微分方程式の解の存在や一意性の重要性について、キッチリとfollowされています。
数学的に計算がちょっと面倒なのは曲率・捩率の公式の証明の計算、定理3.2で合成函数の微分法、行列式の性質(いずれも教養課程の微積分・線形代数の知識)を使います。あとはフルネ・セレーの公式です。
問題4.2の計算は非常に重要で、ここまで詳しく書いてある本は稀です。
簡単なフリーハンドによる落書きさえも、その実、我々はその本質を良く知らないという事を認識させられます。その点で、本書の果たす役割は大きいと思います。
人間は平面(2次元)・空間(3次元)しか視覚では認識出来ないので、Mathematicaに拠る“アニメ実験数学(+1次元)”が可能となった意義は極めて大きいです。
逆にMathematicaでどんな平面曲線も自在に描けるか?と言うと、例えば良く知られたデカルトのFolium(正葉形)etcは意外と難しいという事が分かります。デカルトの正葉形は別の与え方も有り(『多様体の基礎(松本幸夫 )』p152参照)、そちらの方が苦労しません。
平面曲線の基本定理(定理2.3)、空間曲線の基本定理(定理3.3)、曲面論の基本定理(定理4.3)等で、曲率と捩率で曲線が決まってしまうという事実は、殆どの日本人が知らないのではないでしょうか?
つまりp51やp119の様に、Mathematicaで描かれた曲率や捩率のグラフを見れば、どんな平面曲線や空間曲線なのか?分かってしまうのです。
当然ですが、Mathematicaによる2次元、3次元のグラフィックスの設定についてはどの本よりも詳しいです。
2.4の『一般的な曲線の生成』は他書では見たことが無い項目であり、強い印象を受けました。特に
一般的な(閉)曲線はフーリエ級数で近似出来る、という有名な事実(ワイヤストラスの定理)に基づいています。
何故曲線の長さをパラメーターに採るのか?曲率の意味、捩率の意味、接触円の図形的意味etc、Mathematicaを使って初めて認識出来る事柄が記載されています。
特に、Gauss写像の回転角の増分が曲率の弧長に関する積分で計算できるというのは面白いです。図2.33のGauss写像と曲率のグラフは興味深いものがあります。平面閉曲線の曲率はGauss写像のS上のスピードを表すというのは動画で見て初めて確認出来る事で、静画ではなかなか実感が湧きません。
つまり我々が普段腕に付けてる腕時計は、円のGauss写像に他ならない訳です。
平面曲線の基本定理は初めて目にしました。クロソイドの意味が分かり平面曲線が抱える難しさが理解出来るようになりました。
有名なMukhopadhyayaの卵形線の4頂点定理は、直感的に分かりにくい定理ですが本書で曲率のグラフを見て漸く理解することが出来ました。
3次元曲線ではVivianiの曲線を初めて知りました。この曲線上を動標構が動かし、同時にその曲率、捩率を観察する事によってVivianiの曲線の特性を調べる事が可能となります。
p112例3.2は管状近傍を見える化したもの(クローバ型の結び目)で、多様体論(『多様体(服部晶夫)』p209)やPL多様体論では頻出のものです。
曲面論については、他書では余り詳しく説明されていない立体射影について証明付きで解説されているので多様体の導入にもなっています。又、Enneperの曲面、Scherkの曲面(逆さまにひっくり返しても元と同じ曲面)etc、今まで見たことのない面白い曲面を眺める事が出来て非常に興味深かったです。
色々な曲率の例として挙げられているTorus(円環面)はR,rを色々変化させて見ると様々な輪(ring)が得られ、これが一般的な閉曲面の基本になっています(穴の数を増やして行けば良い)。
定理4.2(GaussのTheorema Egregium)や曲面論の基本定理、Christoffelの記号、Gaussの方程式、Mainardi-Codazziの方程式etcは今まで見たどの微分幾何の本よりも分かり易い。
曲面同士の等長対応(isometry)の本質をこの本で初めて知りました。
p225の指標表記法はテンソル解析の導入になっており、非常に参考になります。他の微分幾何やリーマン幾何の本にはいきなりテンソル表記で始まっているものもあり面喰いますが、その点本書は非常に初学者に親切です。
極小曲面、測地線の説明も今まで見たどの本よりも簡潔で分かり易かったです。そのMathematicaによるAnimationはとても素晴らしいものです。
教養課程の数学を終えた人に対し、微分幾何ひいては多様体へmotivationを掻き立てられる恰好の優れた入門書になっています。
新時代の数学を象徴する数学書である事や、その重要さに鑑み、又MathematicaのVersion upに伴う付属のCDの改訂版及び再版が強く望まれる数学書です。このCDに収められているプログウラム集はA.Gray氏の本よりプログラム的に巧妙なものが多く、江戸時代の名工 左甚五郎級の価値が有るものです。
※Version upに伴い、Graphics関係はかなりup-gradeされ、評者が使っているVer13.2の段階では、
p14のDo[Plot]]はAnimate[]の方が良く動作します。p88のImplicitPlot → ContourPlot 等へと変更されています。
行列の積は“・” ではなく、“*”かまたは空白(スペース)です。
RandomコマンドはRandomReal等に変わっています。
その他Graphics関係のパッケージは呼び出す必要は無く、Arrowコマンド等はそのまま使えるようになっています。またGramSchmidtはOrthogonalizeに変わっています。
GraphicsArrayはGraphicsGridやGridに変更になりました。
Do[Show[]]は上手く動かないことが多く、Animate[Show[]]の方が上手く動きます。
2次元の配列(点)は外側かっこ{}が必要になりました。あとは殆どそのまま(例えばp93の図etc)動きます。動作を確認しながら実験してみるのも一興です。
※p194 上から5L(4.111)式の右辺の分母 √ が付く
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曲線論・曲面論: Mathematicaで探索する古典微分幾何学 (Computer inEducation andResearch 3) 単行本 – 1999/8/1
田澤 義彦
(著)
付属資料:CD-ROM(1枚)
- ISBN-104894711338
- ISBN-13978-4894711334
- 出版社桐原書店
- 発売日1999/8/1
- 言語日本語
- 本の長さ309ページ
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
〈CD-ROM付き〉ソフトウェアMathematicaを全面的に活用しながら、曲線論・曲面論の基礎を解説する。
登録情報
- 出版社 : 桐原書店 (1999/8/1)
- 発売日 : 1999/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 309ページ
- ISBN-10 : 4894711338
- ISBN-13 : 978-4894711334
- Amazon 売れ筋ランキング: - 428,272位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 552位代数・幾何
- カスタマーレビュー:
著者について
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2023年6月27日に日本でレビュー済み
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数式処理言語による古典微分幾何学の理解は直感的に理解できるし楽しいものである。
PCをつかったMATHEMATICAによる類書は数多いが、おおくは買わなくても!図とプログラムをみれば部分的にかなり理解できる。てもとにあれば、もっといいのだがなにせ高価で重い!くて使いにくいものがおおい。
古典的微分幾何の基礎部分を頭に入れるには本書はコンパクトで必要十分な内容である。
すぐれて実用的にも理論基礎にも学部の教養教科書としてよい。
この本で気持ちよく理解してより高いレベルに行くように書かれている本である。
MATHEMATICAになれながらよめることも勘案すれば、元は十分取れるであろうと信ずる。
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すぐれて実用的にも理論基礎にも学部の教養教科書としてよい。
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MATHEMATICAになれながらよめることも勘案すれば、元は十分取れるであろうと信ずる。