まず評者の技術レベルは，
・C言語には堪能（自分で言うのもナンだが）．
・オブジェクト指向は，その概念は理解しており「情報隠蔽」などの必要性も痛感．
しかし，オブジェクト指向での実際のプログラミング経験はない．
といったところである．Objective -Cの解説書としては二冊ほど読んだ
（うち一冊は途中で挫折）のでObjective-Cについては少々知っている．
余り他の本を知らないが，読んだ中では「Objective-CとCocoa入門に最良」といって良い．
以下その理由：
１）訳がこなれており読みやすい（原著は読んでいないが）．
２）筆者は講習をしているだけあって，話の進め方や教材（題材）の選び方などに
上手さを感じた．
また，どの辺で初心者がつまづくか分かっている感じだ
３）所々に説明用に書かれている「オブジェクトの関連図」が理解を助けるのに
大きな役目を果たしている．
４）「チャレンジ」と題した課題が要所要所にあり，これが自分の頭を絞って考え
言語を体得する絶好の機会になっている．
サンプルコードを打ち込んでいるだけでは本当の力にならない．
５）解説とサンプルコードのバランスがよい．
解説を読みサンプルコードを打ち込みコンパイル＆ビルド＆実行という作業を続けていると，
100ページを越えるあたりで何というか飛行機が離陸したときのような感触が得られ，
コードがすっと頭に入ってくるようになる．
プログラミングは体で覚えるのが早い，とはよく言ったものである．
（筆者自身も相当プログラマーとしての経験が深そうなのは随所に感じること）
・・・と，良いことづくめのようだが，もちろんそうではなく
Cを知らないと読み続けるのは厳しい．Cでなくとも，
少なくとも何かの言語の（お遊びでない）ある程度の経験がないと
途中で力尽きると思われる．単に文法だけのことでなく自分でプログラムをして初めて分かる
勘どころを前提にして話が進む感じがある．
結論：他の言語の経験がありObjective-Cを仕事で使う必要性が出てきたのであれば，
あれこれ手を出さず最初からこの本を読むことを勧める．量が多いと感じるかも知れないが，
そもそもこの本のこと位は知らないとプログラミングで飯は食えないだろう．
そして著者も書いているとおり一日も早くソフト開発に取り組むことが
エキスパートになる近道である．
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