この本は、西田幾多郎の思索は従前哲学を吟味・統合化したものとし、これを時間、自他、宗教等に再編成し、更に著者の洞察である無我漂流を語ったものである。
取り上げられたものは、インド仏教（ナーガルージュナ、ダルマキールティー等）、東アジアの華厳、天台、禅（道元）、現代哲学（大森荘蔵、マクダガード等）等多岐にわたる。
先ず、世界の見取図として三つを示す。
１ 主観・客観一体（無我、空、絶対無、意識現象、大円・小円、無時間）
２ 構想された主観・客観
３ 極限概念としての主観・客観（実体化、自然科学的世界観）
現実世界は１、２・３の重ね合わせで仮象として現象する。
そして、それは絶対矛盾的自己同一となっている。
１は、意識現象間無関係で矛盾的依存関係にある。
そして、論理的に行き着くところは、無我漂流（永遠の無常）であった。われわれは「私は私だ」という自己意識に閉じ込められているので、それに気づかない。但し、論理的には自覚できる。
前著、夢幻論より一層明快になっている。時間論に興味のある人向き。
参考
．意識現象とは純粋経験、行為的直観、自即他、相即相入つまり入れ子、事事無碍法界でも表わせる。
．絶対矛盾的自己同一とは即非、即のことで矛盾的依存関係である。
．縁起は相関的依存関係でなく、矛盾的依存関係（相即ともいう）である。
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