まえがきの冒頭「なぜみんなが心理学に関心を持つかというと、ひとりで苦しいからですよ」が、本書誕生の現代社会の背景か。現代社会の心理主義に対して、疑問を批判を投げかけている。心理主義とは、人の状態や行動また社会現象を、臨床心理学的な視点から人間の内面のありように還元して解釈し、説明し、問題を改善・解決しようとする立場。
個人の内面を重視する心理主義は、個人が自己解決や自己実現の力を高め、自己管理能力をつけ自己責任を負うための自己教育を重視する。社会構造的な問題も個人の責任に還元される可能性が高まり、弱肉強食の自由競争だ。
文部科学省が公布した「心のノート」については、人間関係、社会的状況の中の自分から、内面への孤立的な内省へ導くという。愛国心教育、「長いものには巻かれろ」状況、コントロール社会化に警鐘を鳴らしている。
本書は、心理主義を批判する立場で書かれているのだが、もちろん、人間の行動には「心」に還元される部分も多い。心理カウンセリングは万能ではないが、それにより救われて人もいる。カウンセリングをうけた子どもの中には、自分の意見をきちんと受け止めてくれず、「ごまかされた」という気持ちがあるというが、問題は心理カウンセリングではなく、カウンセリングをした人の資質であろう。いささかバランスを書く著作か!? いや、著者たちの戦略でしょう。読者は、「なるほど!」「言い過ぎ」「確かにそのとおり」「そんなことは無いだろう」など、自分の心リアクションを楽しめる論争的な著作である。

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心を商品化する社会: 「心のケア」の危うさを問う (新書y 112) 新書 – 2004/6/1
- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社洋泉社
- 発売日2004/6/1
- ISBN-104896918266
- ISBN-13978-4896918267
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登録情報
- 出版社 : 洋泉社 (2004/6/1)
- 発売日 : 2004/6/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 222ページ
- ISBN-10 : 4896918266
- ISBN-13 : 978-4896918267
- Amazon 売れ筋ランキング: - 414,025位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 38位新書y
- - 234位社会心理学 (本)
- - 1,911位臨床心理学・精神分析
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年9月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「心理学」が心理主義の立場で現代の教育に忍び寄り、ほとんどの人が知らないうちに「動かさ」れる対象として扱われてしまう背景がしっかり書かれている。これからの「道徳教育」に巧みに取り入れられ、政治的に利用されることも解き明かしている。教育関係者のみならず、子どもさんをお持ちのお父さん、お母さんにも読んで欲しい一冊です。
2013年4月2日に日本でレビュー済み
著者は、和光大学オープンカレジ講師の小沢牧子と、慶応大学、パリ大学で現代思想を学び、現在・法政大学講師の中島浩壽。
(2004/06/21 初版発行)
副題『「心のケア」の危うさを問う』というのが、本書の主旨。
最近は、「心の病気」も認知度が高まっており、その「扱い方」に警鐘を鳴らす本書であるが、そもそも学問的に日進月歩ではあるが、確定的な答えがない以上、ケアする側も対応を慎重にすべきである、ということ。
カウンセラーに対して「資格」を与えるべきなのか、そのカウンセラーの言質が全て正しく従うべきなのか、その危うさに危機感を表している。
「心」が価値化・商品化され、その“心理主義”が流行しており、生きていく上での社会的問題を個人の責任へと転嫁する構造が流行っている。
断定的な治療が難しい以上、国も諸手を挙げて遂行すべきでないと思う。
自分は時期が違うけれど、2002年4月から文部科学省が小中学校に向けて『心のノート』っていうのを配布して、心の成長を促しているらしい。
本書で内容を見たら、国粋主義で、サイコにしか見えなかったけれど…。
(2004/06/21 初版発行)
副題『「心のケア」の危うさを問う』というのが、本書の主旨。
最近は、「心の病気」も認知度が高まっており、その「扱い方」に警鐘を鳴らす本書であるが、そもそも学問的に日進月歩ではあるが、確定的な答えがない以上、ケアする側も対応を慎重にすべきである、ということ。
カウンセラーに対して「資格」を与えるべきなのか、そのカウンセラーの言質が全て正しく従うべきなのか、その危うさに危機感を表している。
「心」が価値化・商品化され、その“心理主義”が流行しており、生きていく上での社会的問題を個人の責任へと転嫁する構造が流行っている。
断定的な治療が難しい以上、国も諸手を挙げて遂行すべきでないと思う。
自分は時期が違うけれど、2002年4月から文部科学省が小中学校に向けて『心のノート』っていうのを配布して、心の成長を促しているらしい。
本書で内容を見たら、国粋主義で、サイコにしか見えなかったけれど…。
2007年4月30日に日本でレビュー済み
前著「心の専門家はいらない」の問題提起をまとめ、心のノートや予防的なカウンセリングによる心理主義の広まりを追加。
筆者は専門家の技術よりも普段の人間関係を深めることを重視している。また、ある問題について心に注目することが他の要因を見落とすことに繋がると警鐘を鳴らす。
このような視点は重要だが、前著に比べても主観による記述、反対派としての政治的色合いが強いように感じられるのが残念だ。問題解決の提案よりも、犯人探しと糾弾に力を入れている。
問題児のケアに専門家ではなく教師があたることは重要だ。しかし、彼等に労力や責任を負わせ続けることは果たして正当なのか。
「心のノート」は問題だらけだ。しかし、世の中が学校崩壊を騒ぎ立てる中、国は何もしない訳にもいかない。他にどんな施策が考えられるか。
カウンセラーを批判する一方でまとめが「カウンセラーなしにじっくり向かうしかない」では片手落ちであろう。
筆者は専門家の技術よりも普段の人間関係を深めることを重視している。また、ある問題について心に注目することが他の要因を見落とすことに繋がると警鐘を鳴らす。
このような視点は重要だが、前著に比べても主観による記述、反対派としての政治的色合いが強いように感じられるのが残念だ。問題解決の提案よりも、犯人探しと糾弾に力を入れている。
問題児のケアに専門家ではなく教師があたることは重要だ。しかし、彼等に労力や責任を負わせ続けることは果たして正当なのか。
「心のノート」は問題だらけだ。しかし、世の中が学校崩壊を騒ぎ立てる中、国は何もしない訳にもいかない。他にどんな施策が考えられるか。
カウンセラーを批判する一方でまとめが「カウンセラーなしにじっくり向かうしかない」では片手落ちであろう。
2004年12月15日に日本でレビュー済み
一読して、著者らの意見には概ね同意だったが、
何もここまで必死にならなくても、という思いも少なからずあった。
そこで、実際を確かめるべく中学生用の「心のノート」を
見てみたところ(ウェブ上で見ることができた)、
それは著者らが危惧するのも最も、と思わされる代物であった。
冒頭から「自分さがしの旅に出よう」である。
「自分さがし」はメディアが煽ったものとばかり思っていたが
まさか教育の現場でまで謳われていたとは思いもよらなかった。
イラストもニューエイジ的なものへの親和性を感じた(主観であるが)。
多少バランス感覚に欠けるところがある本とはいえ、
この「心のノート」をはじめ各種心理主義の問題点が
より広く認識されることを期待して星5つとした。
何もここまで必死にならなくても、という思いも少なからずあった。
そこで、実際を確かめるべく中学生用の「心のノート」を
見てみたところ(ウェブ上で見ることができた)、
それは著者らが危惧するのも最も、と思わされる代物であった。
冒頭から「自分さがしの旅に出よう」である。
「自分さがし」はメディアが煽ったものとばかり思っていたが
まさか教育の現場でまで謳われていたとは思いもよらなかった。
イラストもニューエイジ的なものへの親和性を感じた(主観であるが)。
多少バランス感覚に欠けるところがある本とはいえ、
この「心のノート」をはじめ各種心理主義の問題点が
より広く認識されることを期待して星5つとした。
2010年3月1日に日本でレビュー済み
どうも個人的にカウンセリングには肌の合わないものを感じていた。
これまではその違和感が何によるものかはっきりとはわからなかったが、今はわかる。
結局のところは問題は個人の責任に帰してしまう。周囲に問題があっても最後はその個人の適応の問題になってしまう。そういった部分に違和感を感じていたのだろう。
本当に解決すべきは周囲の社会や周囲との関係性かもしれないのにすべては個人の問題となり、関係性は断ち切られてしまう。ばらばらの個人ほど攻略しやすいものはない。
また、心理主義がいかに体制に都合のいい側面を持っているかという事実も薄ら寒いものがある。
心理主義の前では個人の内面の内面まで明らかにされる。明らかにしなければならない。
最後の砦であるはずの内心の自由が侵されてしまう。予防のまなざしの前にはほんの少しの揺らぎも異常ととられてしまう。うかつなことは出来ない。ここまでされたら従順に従うしか無くなってしまうだろう。
心理の業界の内紛には興味はないが、臨床心理士の資格の背景にある政治的思惑には当時からうさんくささを感じていたが、それ以上のきな臭さを感じてしまう。こころの時代は衣を買えただけの修身の、愛国の時代かもしれない。
心理主義は大きな力を持つ諸刃の剣である。人々の繋がりを断ち切るのではなく、よりよい関係性を築くために活用していきたい。
これまではその違和感が何によるものかはっきりとはわからなかったが、今はわかる。
結局のところは問題は個人の責任に帰してしまう。周囲に問題があっても最後はその個人の適応の問題になってしまう。そういった部分に違和感を感じていたのだろう。
本当に解決すべきは周囲の社会や周囲との関係性かもしれないのにすべては個人の問題となり、関係性は断ち切られてしまう。ばらばらの個人ほど攻略しやすいものはない。
また、心理主義がいかに体制に都合のいい側面を持っているかという事実も薄ら寒いものがある。
心理主義の前では個人の内面の内面まで明らかにされる。明らかにしなければならない。
最後の砦であるはずの内心の自由が侵されてしまう。予防のまなざしの前にはほんの少しの揺らぎも異常ととられてしまう。うかつなことは出来ない。ここまでされたら従順に従うしか無くなってしまうだろう。
心理の業界の内紛には興味はないが、臨床心理士の資格の背景にある政治的思惑には当時からうさんくささを感じていたが、それ以上のきな臭さを感じてしまう。こころの時代は衣を買えただけの修身の、愛国の時代かもしれない。
心理主義は大きな力を持つ諸刃の剣である。人々の繋がりを断ち切るのではなく、よりよい関係性を築くために活用していきたい。
2005年10月11日に日本でレビュー済み
心の問題の原因は心に問題を起こした人間に起因する、とする今日の『心理主義』的な『心のケア』を批判する本書の立場は、
心の問題の原因は社会に起因する5割、
心の問題は人間関係(社会学的にはこれも社会だが)に起因する5割
である。
で、『具体的に我々はこうしている、こうしたい、このような運動をしている』が無いのである。
前著もそう。
外野の野次として読むのは面白い。
しかし救いはない。
心の問題の原因は社会に起因する5割、
心の問題は人間関係(社会学的にはこれも社会だが)に起因する5割
である。
で、『具体的に我々はこうしている、こうしたい、このような運動をしている』が無いのである。
前著もそう。
外野の野次として読むのは面白い。
しかし救いはない。
2004年6月18日に日本でレビュー済み
小学6年生女児の同級生殺傷事件など、学校で起こる様々な事件。
当事者である加害者、被害者だけでなく、同じ学校で学ぶ少年少女たちにも、心に深い傷を与える。
そんな彼らの心のケアが必要として、カウンセラーが派遣されるとのニュースを頻繁に見聞きするようになった。
子供達に限らず、過度のストレスにさらされる現代人にとって、カウンセリングの重要性が増しているのは、間違いないだろう。
だからといって、安易なカウンセリングのあり方について、大いに問題があると、著者たちは警鐘をならす。
著者たちの主張は、時に極論と思える部分もあるが、概ね共感できる。
カウンセリングの重要性が高まりつつある時代だけに、変にカウンセリングが万能であるかのような錯覚が生まれる前に、万人に読んで頂きたい。
当事者である加害者、被害者だけでなく、同じ学校で学ぶ少年少女たちにも、心に深い傷を与える。
そんな彼らの心のケアが必要として、カウンセラーが派遣されるとのニュースを頻繁に見聞きするようになった。
子供達に限らず、過度のストレスにさらされる現代人にとって、カウンセリングの重要性が増しているのは、間違いないだろう。
だからといって、安易なカウンセリングのあり方について、大いに問題があると、著者たちは警鐘をならす。
著者たちの主張は、時に極論と思える部分もあるが、概ね共感できる。
カウンセリングの重要性が高まりつつある時代だけに、変にカウンセリングが万能であるかのような錯覚が生まれる前に、万人に読んで頂きたい。