永きに亘ってロマネスク聖堂を訪ね歩き、研究に勤しんだ著者・柳宗玄は言う…「本書は、私の“巡礼”の総決算である」と。
初出は約40年前に遡るが、この著作選に収めるに当たり一部を加筆し、更には図版も厳選したとの事、正しく「総決算」に相応しい一冊と言えよう。
本書は先ず、技術の革新と石材への執念が導いた大建築の時代に言及した総説「象徴芸術の大時代」を以て始まり、下記のように続く。
第一章「天の像」
神の像を中心に考察(聖母子像も含む)。
特に、着衣と裸体の磔刑像を比較分析し、生々しさを避けたロマネスク美術の悲劇的表現が、却って神秘性を演出する結果となった事を指摘している所は新鮮である。
また、芸術家が自分の名前を残さなかった時代に「われをつくれり」という銘文があるのに着目した謎解きも画期的であった。
因みに、かの有名な“黒い聖母”論もこの章に含まれる。
第二章「地の像」
ロマネスク美術の図像の特色を論じている。
旧約/新約聖書の主題や受難像の激増に関する考察も素晴らしいが、何よりもロマネスク美術を“庶民の芸術”と捉え、君主や名士の像が存在しない事を鋭く論じているのが面白い。
尚、ロマネスク美術の怪物達に関心がある方にとっては、動物(怪物を含む)や植物の図像を個別に扱った本章は必読である。
第三章「神の家」
石の壁、柱、アーチ、ヴォールト等、聖堂建築の具体的な構造を取り上げているが、難しい建築用語は避け、あくまでも「神の家」という概念に重点を置いているので解り易い。
また、ロマネスク建築には“国際様式”が無いと言われるだけに、最終節で地域性に着眼している所も実に有意義であった。
第四章「素材・機能・造形」
ロマネスク美術の理念を最も端的に扱っているのが、この最終章。
嘗てのイコノクラスムに象徴されるように、キリスト教美術は、常に「偶像崇拝」という問題を含有していた。
本章では、華麗なるクリュニー派と装飾を否定するシトー派の宗教理念の対立について言及しながら、荘厳美術の伝統、色彩と光、装飾としての彫刻について順次分析していくので、実に読み応えがあった。
因みに、カラー・白黒共に図版が極めて充実している上に、巻末ではそれ等の作品について丁寧に紹介しているので、ただの付録と思わずに、しっかり読み込んで頂きたいと思う。
400頁に迫る著作であるにも拘らず、簡単に読み終えてしまう程に解り易く、然も網羅性に於いても手抜きが無い。
葛藤と論争が渦巻く中で生まれたロマネスク美術の開花と終焉…その全てを劇的に語った名著である。
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ロマネスク美術 (柳宗玄著作選 4) 単行本 – 2009/5/1
柳 宗玄
(著)
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- 本の長さ401ページ
- 言語日本語
- 出版社八坂書房
- 発売日2009/5/1
- ISBN-104896947568
- ISBN-13978-4896947564
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登録情報
- 出版社 : 八坂書房 (2009/5/1)
- 発売日 : 2009/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 401ページ
- ISBN-10 : 4896947568
- ISBN-13 : 978-4896947564
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,144,976位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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『ロマネスク美術』(「大系世界の美術」第十一巻、学習研究社、1972年)の改訂版です。
ロマネスク美術を、通常の年代別、地域別などではなく
天の像=天界、神の栄光を表す像
地の像=地界、人間を包む空間にある像
神の家=聖堂
素材・機能・造形
の四つの構成により論じています。絵画、彫刻、建築、工芸の分野にわたり縦横にロマネスク芸術とは何かを明らかにしていきます。
カラー図版には詳細な解説も付されており、ロマネスク美術に関心のある人には非常に価値ある著書です。
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天の像=天界、神の栄光を表す像
地の像=地界、人間を包む空間にある像
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素材・機能・造形
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カラー図版には詳細な解説も付されており、ロマネスク美術に関心のある人には非常に価値ある著書です。