セネガルとフランスの混血作家で仏文学の異才ンディアイ女史の日本初紹介となる短編集。本書に描かれているのは、愛が枯渇してしまったかと思わせる程、殺伐として神経質的、或いは枯れ切って無関心で互いに理解し得ない現代の家族像です。
『少年たち』：ルックスの良い我が子を金の為に平然と他者に売り渡す母親。不幸せという訳でもないのに売られていく少年に憧れる隣りの子供。やがて遂に彼の願いは叶うのだが・・・・。『みんな友だち』：離婚して妻と２人の子供と別々に暮らす元教師の男が昔の教え子だった娘を家政婦に雇って暮らしている。男は娘と理解し合いたいと思ってはいるが激しい反発を受け、娘の夫であるアフリカ系の郵便局員を軽蔑する態度を見せる。皆から避けられ疎外されていく男は、やがて苛立ちから自暴自棄になって暴走する。『見出されたもの』：知的障害をもつ息子をバスで連れて行き残して帰ろうとする母親。さまざまな憐憫の感情が胸に去来するが、決して態度は揺るがない。
著者の人生に対するシニカルな見方が、現代人の酷薄で寒々とした実相を余さず映し出します。確かな心理描写に満ちた全５編、厳しくて行き場のない悲しみを感じさせる物語世界は辛すぎますが、それでも僅かに垣間見える人間性を信じ続けていきたいです。
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