遠征艦隊司令官ペリーが自身の日記や海軍士官らの航海日誌、調査報告などを第三者に提供して執筆させたのが、日本遠征の報告記録たる本書だ。翻訳文も読みやすく、普及版の刊行は開国150周年に相応しい。
ペリー率いる黒船が、大西洋を渡り、喜望峰廻りで、香港、マカオ、上海、琉球を経由して日本に来航した事実に、太平洋の波濤を越えてやって来たと思い込んでいた無知蒙昧ぶりを猛省した。徳川幕府が長崎のオランダ商館長から事前にアメリカ軍艦の来航を警告されていたことも初耳だった。
提督ペリーは、殺到した民間人の参加要請を頑なに拒んだらしい。外部圧力に屈することを潔しとしない根っからの職業軍人らしい手腕は、石炭補給の支障に備えて運搬船を先着させた用意周到さにも窺える。投錨地の地形や気象、動植物、風俗などを部下に調査させる合間に描かせたスケッチ画が読者を楽しませてくれる。
排外主義の日本に対し、友好親善目的のペリーは恩恵ではなく立場の対等を求めたから、一方的な接待や贈り物の授受を毅然として一蹴している。逆に、艦上での饗応でハムやパン、ワイン、ウィスキーなどを振舞われてだらしなく酔っ払い、嬉々として手土産を懐に収めた幕府の小役人たちの意地汚さには呆れ返る。
常時監視の「密偵制度」に触れた記述からは、薩摩藩に武力支配されていた琉球王国での被支配者層の息苦しさが滲んでくるようだ。「士官たちはたえず密偵の目が光り、行動を逐一監視されていることを十分に察知していた。女や子供は役人たちから、アメリカ人が近づいてきたら恐れをなしたように逃げるよう教えられていた。要するに、琉球人の交際態度の特徴は、猜疑のこもった慇懃さだった。」
長崎回航を拒否して浦賀沖に停泊し、江戸近郊の久里浜で浦賀奉行に接見したペリーは大統領親書や信任状を捧呈する大任を僅か四半刻(30分)足らずで終える。外国船打払令により西欧列強国が果たせなかった歴史的快挙を建国77年目の新興国アメリカが成し遂げたことに、元々高かったペリーの鼻はより一層誇らし気に聳え立ったに違いない。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥3,300¥3,300 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥3,300¥3,300 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥2,034¥2,034 税込
配送料 ¥370 6月13日-15日にお届け
発送元: e-本屋さん 販売者: e-本屋さん
¥2,034¥2,034 税込
配送料 ¥370 6月13日-15日にお届け
発送元: e-本屋さん
販売者: e-本屋さん
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ペリー艦隊日本遠征記 上 単行本 – 2009/4/1
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥3,300","priceAmount":3300.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"3,300","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"DOFwco7V3JJbmFXiw%2FLyv%2FdGwARCRWzRa8mK5A0TJ6tGehVYCaOJjT1zCgJFOH%2BP3PzeWONBuo3crPMxXNhBMdTznsHP31gr9I6ogrJp6HoLzVvd5mDH2JpsOaFGU12s","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥2,034","priceAmount":2034.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,034","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"DOFwco7V3JJbmFXiw%2FLyv%2FdGwARCRWzRZU4A9F2rKPHAYJdmskGFBSlrZv4N8ttVmdpdhLdD9yvUbyzHAoW9NttpThDeuErPKAMqlhMiG9riPNg3zOk2EjMOWpLqk%2FDzuK3rg5rNM7FuBX%2ByQHru3jZdjh5ysPDWpe03dcr7bjaFlIHtx5KzvdpUNeAKa0ys","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
開国の雷鳴、黒船来航す!大西洋を横断し、喜望峰をまわる大航海の末、ペリーが到着した日本は、激動する国際情勢の情報を着々と収集しつつあった…。日本は武力で対抗してくるのか、それとも交渉のテーブルに着くのか。水深が不明の江戸湾内に入ることはできず、艦砲射撃は封じられたまま。十分な食料もなく、長期の交渉は不利であることを熟知していたペリーがとった方策は、そして日本の交渉戦術は…。新しい国際政治のうねりが高まる幕末、現代日本の姿を決定した大事件のドキュメンタリーが新しい翻訳で登場。
- 本の長さ601ページ
- 言語日本語
- 出版社万来舎
- 発売日2009/4/1
- ISBN-104901221345
- ISBN-13978-4901221344
よく一緒に購入されている商品
対象商品: ペリー艦隊日本遠征記 上
¥3,300¥3,300
最短で6月3日 月曜日のお届け予定です
残り2点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 万来舎 (2009/4/1)
- 発売日 : 2009/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 601ページ
- ISBN-10 : 4901221345
- ISBN-13 : 978-4901221344
- Amazon 売れ筋ランキング: - 167,120位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,593位旅行ガイド
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2009年12月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年4月19日に日本でレビュー済み
函館の開港は1859年、その開港の端緒となったのがその5年前に来航したペリー艦隊との間で結ばれた「日米和親条約」(下田・箱館)であっ たことは有名な史実。通商上の開港は後に下田駐在の米国領事ハリスとの交渉で結ばれた「日米修好通商条約」によるもの。(5港の開港)そのペリーは54年春に、新たに開港場に指定された箱館に検分に訪れている。
ペリー艦隊の出発から 帰国までの全てを記録した大部の報告書は、米国議会の予算で1856年に刊行され、世界中の反響をよんだ。全3巻、うち航海の 記録は1巻、他は星座や動植物の記録、図版、地図などを収める。歴史著述家Hawksに編集を一切任せたことで、報告書特有の官僚臭があまりなく、客観的 でありながら結構読みやすいものに仕上がったといえる。かなりの反響があって、急遽増刷したといわれるが、当時の欧米諸国での日本への関心の高さもうかがえる。
なにしろ版型も大きく、膨大な書物なので、その全体像が邦訳の形で日本で刊行されることは久しくなかった。それでも第一巻のみの邦訳は全訳が,雄松堂版,岩波【文庫)版などで刊行されている。他に簡約版は多数出ている。
1997 年にはオフィス宮崎編訳、栄光教育研究所を発行元として、原著と同じ版型で、全三巻の「完全版」が発行された。図版、地図まですべて原著と 同じ体裁にしたという、学術的には大変貴重なものだが、なにしろ価格が高く(セットで15万円)、個人での購入は躊躇せざるをえなかった。
今回発行された「ペリー艦隊日本遠征記」は、この「完全版」のうちの第一巻を版型を縮小(4X6版)して2巻構成としたもの。図版・地図はサイズこそ縮小だが全部収録しているという。価格も2冊で6,300円とかなり買いやすくなった。上600ページ、下518ページ。既刊の短所を補いつつ本格的にして親しみやすい普及版。
箱館は23章と24章の一部で80ページを費やしている。函館港、函館山、寺院(称名寺?)、弁天の坂(船見坂?)、墓地など、市内随所の描画も多数収録されている。
ペリー艦隊の出発から 帰国までの全てを記録した大部の報告書は、米国議会の予算で1856年に刊行され、世界中の反響をよんだ。全3巻、うち航海の 記録は1巻、他は星座や動植物の記録、図版、地図などを収める。歴史著述家Hawksに編集を一切任せたことで、報告書特有の官僚臭があまりなく、客観的 でありながら結構読みやすいものに仕上がったといえる。かなりの反響があって、急遽増刷したといわれるが、当時の欧米諸国での日本への関心の高さもうかがえる。
なにしろ版型も大きく、膨大な書物なので、その全体像が邦訳の形で日本で刊行されることは久しくなかった。それでも第一巻のみの邦訳は全訳が,雄松堂版,岩波【文庫)版などで刊行されている。他に簡約版は多数出ている。
1997 年にはオフィス宮崎編訳、栄光教育研究所を発行元として、原著と同じ版型で、全三巻の「完全版」が発行された。図版、地図まですべて原著と 同じ体裁にしたという、学術的には大変貴重なものだが、なにしろ価格が高く(セットで15万円)、個人での購入は躊躇せざるをえなかった。
今回発行された「ペリー艦隊日本遠征記」は、この「完全版」のうちの第一巻を版型を縮小(4X6版)して2巻構成としたもの。図版・地図はサイズこそ縮小だが全部収録しているという。価格も2冊で6,300円とかなり買いやすくなった。上600ページ、下518ページ。既刊の短所を補いつつ本格的にして親しみやすい普及版。
箱館は23章と24章の一部で80ページを費やしている。函館港、函館山、寺院(称名寺?)、弁天の坂(船見坂?)、墓地など、市内随所の描画も多数収録されている。
2012年4月22日に日本でレビュー済み
日本の幕末に興味があるならぜひこの本を読んでほしい。
ペリーは日本の鎖国を解くために周到な準備と十分な事前調査を行っている。
鎖国に至る経緯、キリシタンの迫害とそれに対するオランダの加勢、欧米各国の日本との関係等、鎖国前の情報と、鎖国中にオランダなどからもたらされる情報を基に、どのようにすれば日本と条約を締結するのか考え、それを確実に実施していることがわかる。
そして当時の沖縄や小笠原諸島の状況、マカオや香港を含む中国の状況、日本を開国させたい各国の思惑なども描かれており、日本国内で伝えられる史実と照らし合わせて読むと大変面白い。 航海日誌ではなく歴史読本と言っても良い。
ペリーは日本の鎖国を解くために周到な準備と十分な事前調査を行っている。
鎖国に至る経緯、キリシタンの迫害とそれに対するオランダの加勢、欧米各国の日本との関係等、鎖国前の情報と、鎖国中にオランダなどからもたらされる情報を基に、どのようにすれば日本と条約を締結するのか考え、それを確実に実施していることがわかる。
そして当時の沖縄や小笠原諸島の状況、マカオや香港を含む中国の状況、日本を開国させたい各国の思惑なども描かれており、日本国内で伝えられる史実と照らし合わせて読むと大変面白い。 航海日誌ではなく歴史読本と言っても良い。
2022年8月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本日到着・未読ですが、内容は他レビューの通りだと思います。
本が痛んでいました。表紙のみならず本体にも凹みがあり、配送より保管時の痛みのように思います。
Amazonで書籍の傷は初めてで、高い本でもあるため残念に思いました。
本が痛んでいました。表紙のみならず本体にも凹みがあり、配送より保管時の痛みのように思います。
Amazonで書籍の傷は初めてで、高い本でもあるため残念に思いました。
本日到着・未読ですが、内容は他レビューの通りだと思います。
本が痛んでいました。表紙のみならず本体にも凹みがあり、配送より保管時の痛みのように思います。
Amazonで書籍の傷は初めてで、高い本でもあるため残念に思いました。
本が痛んでいました。表紙のみならず本体にも凹みがあり、配送より保管時の痛みのように思います。
Amazonで書籍の傷は初めてで、高い本でもあるため残念に思いました。
このレビューの画像