表題作｢泡日」は、傑作コメディー。出だしのドタバタに常套的な印象を受けて警戒したけど、ここで駆け込んできた爺さんが実は…というところから一気に引き込まれる。アッチもコッチも愛の悩みを抱えていて、それらが嫌味なく絡み合い、ラストシーンまでスルスル読まされてしまう。
ただ、何で｢泡日｣なのか、私はよく分かりませんでした。シャンパンとかの「泡物を飲む日」って説も聞いた。それともボリス・ヴィアン『うたかたの日々』(『日々の泡』)ってことなのかな…どなたかご教示ください。
３番目の｢我らの世代が生きのびる道を教えよ！｣は、ルームシェアして暮らしている２０代と思しき女性たちの日常生活スケッチとして進行するが、ここに作者の分身である「寛ちゃん」という漫画家が登場している（かつて作者と現実に合作したボワレ氏も電話ごしに登場する）。で、そのお茶の間での恋愛をめぐる四方山話の只中に突然９・１１テロ映像が降臨し、次のページでは「寛ちゃん」はすでに｢自分にできることはもう何もない｣と言って創作活動を放棄して実家に引きこもっている。
しかし現実の高浜寛はこの作品を書き上げたわけで、おそらく作者はこの作品集全体を９・１１以降の世界と拮抗させているのだと思う。その支えが｢愛してるよたとえこの世が闇に包まれても｣という言葉で、私はちょっと高橋しん『最終兵器彼女』を想起した。いずれにせよ本書はエッヂに立っている、ギリギリの作品集のように感じる。
p136に掲載された少女時代の作者の写真に、「まだ当時は大好きだった父親が撮影」って説明がついてる。わざわざ写真載せてこう書くのは、ちょっとイタいような気もする。痛々しい、とも言うか？
そう言えば、岡崎京子に『うたかたの日々』って作品があった。連想ゲームみたいで申し訳ないけれど、高浜が岡崎を意識していたという可能性は、ありそうに思えるのだが…
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