本書を一言でまとめると、
学習マイノリティーに対して学校図書館はどう対応していくのかというのが昨今の課題だと言える。
例えば、「おむすびころりんすっとんとん」が聴覚障がい者にとってどう伝えるのか。
そしてそれをどう健常者と分かち合うのか。
本書からの一番の学びは、多様性の中にありながら１つの健常者（マジョリティー）に対して包括的になろうと
している意味と理由である。
実際、多様化だけが先行するのであれば障がい者は障がい者だけという枠組みの中だけで生きていくことになる。
他を認めない多様性の行きつく先は「排他」であり、そこに多様性は存在しえない。
社会のあるべき姿としては、多様化を認めながらお互いに近づこうとする行動が必要なのだとわかった。
私が感じたのは、一番学習が必要なのは健常者側ではないだろうか。
昨今、ＬＧＢＴなど少数派が時折スポットライトをメディアから浴びるようになった。
彼らは彼らなりに健常者という社会の枠の中でやっていこうと必死で学んでいるが、
健常者が彼らを理解するという教育機会が施されることは関係者だけであろう。
私は昭和後期生まれだが学校教育として、今のマイノリティー派の話を聞くことは「部落」「差別」程度
しかなかったうえ身の回りに該当者が少なく形だけの教育としてその意味をあまり理解できなかった。
だが、今の学校教育にはそういった問題を取り上げることができても教員一人一人に対しての力量と問題
意識の差が大きく一筋縄ではいかないだろう。
つまるところ、障がい者側に学習の比重が傾きがちになっているように感じる。
本書は、主に『障がい者側』がどう学校図書館を利用するべきかの書であるが、
その背景や問題、考察から、健常者と言える人間にも彼らを理解する教育の必要性を感じた。
最後になったが多様性を認めるその意味とは、ちょっと変だな感じる存在やそれを認めることで、
こんなことも出来る、ここまで人を考えなければならない、といった共感の幅を広げ人間性のよりよい
理解につながることであろう。
大学教授、学校教員、特別支援教室、NPO様々な立場の方からの意見が詰まった一冊です。
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