題名に惹かれ、購入した。
この写真集は一見して、様々な切り口の多様なイメージが「白」で統一されている、という風だ。
白い電気のスイッチ/洗濯層の中の泡/光に満ちた住宅の壁の一部/水道管/
（百合の花や、人間の手さえ静かな不動の物質として撮られている）などの
無機質な白の中にふと、まるではじめて世界に触れた瞬間を刻んだような写真があらわれる。
割りたての新鮮な卵、つがいの鳩、ショーウィンドーで散る造花、こちらを見据えるにわとり。
白く淡く無機質なページをめくりながら、こちらはその温度とリズムに慣らされるが、
その中で瞬間的に現れる生命の様は、見る側に微かな恐怖を与える美しさを持っている。
ここで私は谷口浩という写真家の内なる目に触れたような気がした。
彼の目に映る、蛇口も水道管もスイッチも鳥も人間も、その全ては等価であり同義であり、まさに「ただ、そこにある」のではないか？
それゆえに見る側は、存在や生命そのものを無情に突きつけられたように感じるのではないか？
そしてその無情さが、幾度も開いてみる度徐々に、世界への賞賛、微笑のように見えて来るのだ。
私たちは、物事を見えるように見ようとする、見たいように見ているが、
「自我を超えた視線、世界そのものを見ようとする態度」と言えるか、静かで透明な美しさを感じた。
そして、世界にかろうじて留まっているような繊細な視覚が、日常の中の奇跡を捉えようとしている。
無機質な視覚は現代の世相＝若者の視点と見ることも出来るが、
だとすれば、この殺伐とした現代においても尚、春の芽吹きのような「希望」を待ってもよいのではないか、
そんな気持を起こさせる写真集だ。
白で統一させるといった「意図されたもの」は余分に感じられたが、その中に垣間見える稀有の感覚にもっと触れたいと思った。
次回作も、是非購入したいと思う。
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