今、まことしやかに進められている「裁判員制度」の問題点を衝いた書。国民と無関係にどんどんできたこの裁判員法は、国民と民主主義に対する挑戦状であるという。激しい口調で「あってはいけないこと」だと批判している。
国民が裁判に参加する制度として、一般に外国で取り入れられているのは「陪審員」と「参審員」で、「裁判員」は日本だけで他に例はない。今回日本が新たに実施しようとしているのは、刑事裁判のみ、しかも殺人事件や強盗致死傷事件などの重罪に該当する事件だけに参加、判決を下すことまでする。守秘義務は一生つきまとい、違反すれば懲役刑・罰金刑に処せられることがある。
誰が「裁判員」をつくれと言い出したのか、国民の多数の者がお望みなのか。どんないきさつで、十分検討し練り上げられもしないで、できてしまったかが指摘されている。
著者は、国民の司法参加の必要性を否定しているのではない。あまりにも性急に、中途半端に「生命に関わる重要な法案」を実施しようとしている。繰り返し激しい口調でその停止を求めて首尾一貫している。
そのために「国民的議論」を訴えている。実際自分が裁判員になると仮定して、喜んで心おきなく参加できるだろうか。特別の場合を除いて、無作為に選ばれて「国民としての使命感」から参加できるだろうか。
本書の厳しいアンチテーゼに対して、まだ議論の余地のある間に「国民的議論」が必要に思われてくる。
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殺人犯を裁けますか?―裁判員制度の問題点 単行本(ソフトカバー) – 2007/4/26
田中 克人
(著)
裁判員制度は、国民と民主主義に対する挑戦状だ!
一般市民から選ばれた裁判員が、裁判官とともに評議・評決を行うこの裁判員制度。しかしこの裁判員制度は、国民に知らされていない数々の問題点を抱えながら、施行に向けて着々と進んでいます。
この制度は、果たして本当に私たちの生活にとって必要なものなのか? 「心の駅伝」の著者、田中克人が、国民主権、三権分立、憲法をふまえてするどく検証していきます。
一般市民から選ばれた裁判員が、裁判官とともに評議・評決を行うこの裁判員制度。しかしこの裁判員制度は、国民に知らされていない数々の問題点を抱えながら、施行に向けて着々と進んでいます。
この制度は、果たして本当に私たちの生活にとって必要なものなのか? 「心の駅伝」の著者、田中克人が、国民主権、三権分立、憲法をふまえてするどく検証していきます。
- 本の長さ209ページ
- 言語日本語
- 出版社駒草出版
- 発売日2007/4/26
- ISBN-104903186369
- ISBN-13978-4903186368
商品の説明
著者について
宮城県出身。1967年明治大学法学部法律学科卒業。NHK文化
センター講師、テレビ朝日「CNNモーニング」ニュースキャスターなどを経
て、現在、社団法人福祉社会研究所理事長および財団法人濱野生命
科学研究財団理事長、社団法人日本フィランソロピー協会副会長などを務める。
著書に『心の駅伝 安倍晋三君への手紙』(駒草出版)がある。
センター講師、テレビ朝日「CNNモーニング」ニュースキャスターなどを経
て、現在、社団法人福祉社会研究所理事長および財団法人濱野生命
科学研究財団理事長、社団法人日本フィランソロピー協会副会長などを務める。
著書に『心の駅伝 安倍晋三君への手紙』(駒草出版)がある。
登録情報
- 出版社 : 駒草出版 (2007/4/26)
- 発売日 : 2007/4/26
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 209ページ
- ISBN-10 : 4903186369
- ISBN-13 : 978-4903186368
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著者について
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2008年11月28日に日本でレビュー済み
第1章で裁判員制度の概要、第2章で裁判制度について、第3章で裁判員制度の問題点を説明しているが、この本の最大の特徴は裁判員制度成立の経過を詳細に説明している点であろう。
アメリカからの規制緩和要請に基づき、弁護士の大幅増員を果たしたい自民党、従来から裁判官と検察官の不足に悩んでいた最高裁と法務省、そしてこれを、長年の悲願としてきた陪審員制度を実現できる最後のチャンスと見た日弁連が乗っかる形で議論が始まったのが今回の裁判員制度の発端である。
結局、陪審員制度には絶対に反対の立場を取る最高裁との間で議論が暗礁に乗り上げたときに、審議会の委員長から出た「陪審制でも参審制でもない新しい制度を検討すれば」という言葉から裁判員制度への流れができたという。
つまり、この制度は全く国民のことなど考えておらず、利害関係団体の駆け引きから生まれた妥協の産物なのである。
制度制定の目的と実態が全く乖離しているのも無理はない。「国民参加」ありきで充分な議論なしに妥協の固まりとして設計された制度なのだから。
国民を司法に参加させるべきであるのであればなおさら、施行を延期してしっかりと制度を設計し直すべきであろう。
アメリカからの規制緩和要請に基づき、弁護士の大幅増員を果たしたい自民党、従来から裁判官と検察官の不足に悩んでいた最高裁と法務省、そしてこれを、長年の悲願としてきた陪審員制度を実現できる最後のチャンスと見た日弁連が乗っかる形で議論が始まったのが今回の裁判員制度の発端である。
結局、陪審員制度には絶対に反対の立場を取る最高裁との間で議論が暗礁に乗り上げたときに、審議会の委員長から出た「陪審制でも参審制でもない新しい制度を検討すれば」という言葉から裁判員制度への流れができたという。
つまり、この制度は全く国民のことなど考えておらず、利害関係団体の駆け引きから生まれた妥協の産物なのである。
制度制定の目的と実態が全く乖離しているのも無理はない。「国民参加」ありきで充分な議論なしに妥協の固まりとして設計された制度なのだから。
国民を司法に参加させるべきであるのであればなおさら、施行を延期してしっかりと制度を設計し直すべきであろう。