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HENRY DARGER'S ROOM ハードカバー – 2007/4/1

4.9 5つ星のうち4.9 8個の評価

これは、1973年4月13日に没した稀代のアウトサイダー・アーチスト、ヘンリー・ダーガー(1892-1973)が、人生後半の40年を過ごした部屋の写真集である。 シカゴ市内ウェブスター通りにあるタウンハウス、3階奥の一室がダーガーの部屋だった。生前この部屋に彼を訪ねる人はなく、近所の教会の牧師がたまに訪ねてくるか、大家夫人が電球を替えるために入室するぐらいだったという。身寄りのないダーガーが部屋を去り、大家のネイサン・ラーナーが片付けを始めたところ、そこにとんでもないものを発見した。『非現実の王国で』という題の付いた小説15巻と、その挿絵数百枚だ。 ふつうの大家なら、ゴミにしか見えないものだが、自身アーチストだったネイサンはこの奇妙な創作物に稀有な価値を直観し、部屋の片付けを中止した。本や絵とともにダーガーの持ち物を保管し、その後、この部屋は2000年4月13日に撤去されるまで、27年にわたって保存されたのである。 ダーガーは、今では「20世紀アメリカが生んだ最も重要なアーチスト」と呼ばれることもある。アウトサイダーという冠は不要になりつつあるが、しかし、ダーガーは正真正銘のアウトサイダーだったことを忘れてはならない。美術の門外漢“アウトサイダー”であっただけでなく、社会の疎外者、そして現実“リアリティ”からの逃亡者だ。彼は、日常の現実を否定し、自ら空想した『非現実の王国』を捏造するためだけに生きていた。 部屋には大量の画材と参考資料“ソ−ス・マテリアル”が貯えられていた。ぬり絵、絵本、新聞、雑誌… 路地裏のゴミを漁って入手した品々を部屋に持ち帰り、使えそうなイメージを切り抜き、分類し、スクラップしていた。圧倒的に多いのは少女の図版だが、火事や竜巻の写真など、『非現実の王国』の出来事を視覚化するのに役立ちそうなものすべてがそろっている。そして、これらをコラージュしたりトレースして、頭の中にある『非現実』を可視化していたのだ。持てる時間すべてを費やして。 人は、日常と非日常を往来してアートを生み出す。だが、ダーガーの場合、現実と空想は分かちがたく結びついていた。無慈悲で空虚な現実より、豊かで甘美な空想世界がリアルさを増してゆき、ダーガーはこの部屋に居ながら、『非現実』を生きていた。特異なアートを生み出した特異な人生。どちらもこの部屋で起こった。
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商品の説明

レビュー

ヘンリー・ダーガー(1892-1973)は、シカゴ市内のウェブスター通り851番地にある建物の3階の家具付き賃貸の小さな一室に人生の後半の40年を過ごし、大家に電球を替えてくれと頼む以外はろくに人と言葉を交わすこともなく、部屋を訪れるのは教会の牧師のみという特異な生き方をした。室内での暮らしぶりは誰にもわからなかったが、ときおり複数の声色で一人芝居をするような音が漏れ聞こえたようである。齢を重ね体調を壊したターガーが部屋を出ることになり、大家であるネイサン・ラーナー(1997没)が部屋の荷物の処分をあずかる。ドアを開けると、ゴミ、ゴミ、ゴミの山。だが片付けはじめてまもなく、ネイサンの手の動きが止まる。高名な工業デザイナーでもあった彼がそこで目にしたのが、『非現実の王国で』をはじめとしたダーガーの著書や挿絵、電話帳などを利用したスクラップブックや膨大な未整理の印刷物で、彼はその価値を即座に直感したのだった。 『HENRY DARGER’S ROOM 851 WEBSTER』は、ダーガーの部屋が初めて人の目にさらされたまさにその時に撮られた白黒写真と、この部屋の撤去が決まったあとの1999年に「朝日ジャーナル」の取材で訪れた四方田犬彦さんに同行した北島敬三さんが撮ったカラー写真、そして、生涯残されたたった3枚のダーガーの写真を中心にした、このひと部屋の写真集である。掲載された間取り図によるとバストイレはあるがキッチンらしきものはなく、4.12m×5.25mとあるから広さは20平米程度、不釣り合いに豪華な暖炉があるせいか、写真で見るとずっと広く感じられる。 ダーガーが描いた小説は彼にとっての理想の世界で、本人にしてみればそれを「日常」と信じ時を過ごすしか生きようがなかったのだろう。「室内から複数の声色が聞こえた」というのはまさにその「日常」を生きていた証しだ。美術を学んだことのない彼がその世界を視覚化するためにしたことは、参考になる図版をとにかく集めることだった。「外の世界」は印刷や写真によってあらゆる物事が転写されかつそれがゴミとして打ち捨てられている。拾い集め大量に運び込んでは分類とスクラップを繰り返し、コラージュやトレースによってイメージを形にする。その全てが行われていた4.12m×5.25mのこの場所は、「日常」と「非日常」を抱える砂時計の首のようなものである。彼が描いた彼の「日常」をのぞき見ることよりも、この砂時計の首にまきついて行き交う砂を想うほうが、ブリリアントな悦びに満ちる。 --KINOKUNIYA BOOKLOG 書評空間 四釜裕子

著者について

本書は、20年間以上の時をへだて、二度にわたって撮影されたダーガーの部屋の写真で構成されている。写真家の北島敬三さんは1999年、四方田犬彦氏が「朝日ジャーナル」の取材でダーガー部屋を訪れた際に同行し、撤去されることが決まっていた部屋の最後のようすを撮影した。大家夫人であるキヨコ・ラーナーさんからは、1970年代の古い写真をお借りした。これらはダーガーが亡くなった後、部屋の片付けをする途中で撮影された貴重なものである。 そしてもちろん、私たちがヘンリー・ダーガーの世界を知ることができたのは、家主であったネイサン・ラーナーのおかげである。アウトサイダー・アートは第三者によって発見されなければ、消えてゆくしかない。ダーガー作品も、ネイサンの直観なくして存続しえなかった。写真家であり、優れた工業デザイナーだったネイサン・ラーナー。モホリ・ナジの愛弟子で、イリノイ工科大学で教鞭を取る知的な人物が、合理性を逸脱したアウトサイダーの発見者となった奇遇を本人はどう感じていたのだろうか?

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ IMPERIAL PRESS; A5変形版 (2007/4/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2007/4/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • ハードカバー ‏ : ‎ 112ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 490439500X
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4904395004
  • カスタマーレビュー:
    4.9 5つ星のうち4.9 8個の評価

著者について

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都築 響一
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1956年、東京生まれ。76年から86年までポパイ、ブルータス誌で現代美術、建築、デザイン、都市生活などの記事をおもに担当する。89年から92年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行。以来現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆活動、書籍編集を続けている。1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。1996年発売の『ROADSIDE JAPAN』で第23回・木村伊兵衛賞受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中である。

カスタマーレビュー

星5つ中4.9つ
5つのうち4.9つ
8グローバルレーティング

この商品をレビュー

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上位レビュー、対象国: 日本

2015年1月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
正直、何も彼の事は知らずでした。
ですが何か惹かれる所があり、また知る機会があり購入に至ったわけですが。
刺激の何者でもないモノがビシビシと。
制作物、収集物、インテリアといいますか・・・。
たまりません。
6人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート

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joseph hornsby
5つ星のうち5.0 Good service.
2019年12月1日にアメリカ合衆国でレビュー済み
Amazonで購入
I’ve looked for this title for awhile. Glad to have it.