以下、引用。
A アリスはだんだん退屈になってきました。土手の上にお姉さんと並んで座っているのですが、何もすることがないのです。一度、二度、お姉さんの読んでいる本を覗いてみたけれど、その本には絵もなければ会話もありません。
「いったい何の役に立つのかしら?」
とアリスは思いました。
「絵も会話もない本なんて」
B みんなが上から覗き込んで、『ねぇ、上がっていらっしゃいよ!』なんて言っても、私は上を見上げて、こう言うだけよ。『それじゃ、私は誰なの? それを先に言ってちょうだい。もしその人になっても良かったら上がっていくわ。嫌だったら、誰か別の人になれるまで、ずっとここにいるから』
B「おまえさんは、だれだね?」
(中略)
「それが――あの、今のところ、よくわからないんです――今朝起きたときに自分が誰だったのかはわかっているんですが、その後、何回も変わっちゃったみたいですから」
(中略)
「ちゃんと説明したまえ!」
「申し訳ありませんが、それが自分でも説明できないのです」
と、アリスは言いました。
「だって、私は私じゃないものですから、ご存じの通り」
「そんなことご存じじゃない」
B「わたしは……、わたしは女の子よ」
とアリスは幾分怪しげに言いました。
A「みんな、ただの空想なのさ。何も悲しいことなんかありゃしないんだ。さぁ、来いよ!」
Aの引用は、人生の暗喩だろう。
何も書いてない(描いてない)本は、アリスがこの先、自らの手で人生を作っていくことを表してる。
「みんな、ただの空想なのさ」は(グリフォンの台詞だが)人生の儚さや諦観を意味したいのだろう。
Bの引用は、思春期の少年少女が直面する、自我の問題を指している。
「私は誰なの? それを先に言ってちょうだい」、「私は私じゃないものですから」は、青少年が抱える不安をよく表してる。
特に、自分が「女の子」であることさえも疑問の対象になる点は注目に値する。
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