「民俗芸能」は戦後に生まれた造語ですが、「民俗」＋「芸能」という二つの概念の複合的な組み合わせが「素朴」「古風」といったイデオロギーを内包していると指摘、イデオロギーによらない「民俗」＋「芸能」論を民俗学的または美学的に考察し、また地域論で周圏論を批判的に再検討し、そこから伝承者の「熱情」「異常人物」論に至ります（※異常人物論は本書では取り上げられていません）。
民俗芸能の分野では「真正な文化」を掲げる本質主義が支配的でした。一方で平成に入った辺りから文化とは時代の文脈に応じて再構成されたものなのだという構築主義的な議論が若手を中心に盛んになります。その議論をリードしたのが本書の著者である橋本氏です。橋本氏自身は構築主義という言葉を用いていませんが、民俗芸能の論文を読んでいると橋本氏の論文が引用される場面にしばしば出くわします。それらの論考を収めたのが本書です。
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