柄谷行人やネグリには、今のところ興味はない。マルクス思想、マルクス主義の
入門として本書を購入した。浅田彰のマルクス思想、マルクス主義の歴史の要約は
非常に明瞭でわかりやすい。初心者には絶好の入門書であろう。
しかし、他のレビュアーも書いてある通り、現存した社会主義の実態に対して
マルクスの責任を回避しようとする意図が明瞭に感じられる。ここは初心者は
特に注意しなければならない。
浅田彰は「スターリンによる歪曲というのはやはりあまりにも極端であって、
その責任をマルクスやマルクス主義に負わせるのは無理がある。そういうスターリン
の負の遺産がソ連解体によって歴史の舞台から退場していったいまこそ、マルクスと
マルクス主義をまともに考え直す好機だろうということです」。( P 11)
と言っているが、これに対して最近出版された塩川伸明の『冷戦終焉20年』
の中で正鵠を射た意見が述べられている。
「ソ連、東欧、中国などの国内ではイデオロギー統制が厳しかったから、
正統イデオロギーを離れることは確かに難しかった。しかし、欧米諸国や
日本でマルクス主義について論じる人々は、特定国家の護教イデオロギー
(スターリン主義)にとらわれることなく、自由な再解釈をすることが以前から
できたはずである。今頃になってはじめてそれが可能になったと主張する人は、
自分が最近まで護教イデオロギーにとらわれていた−国家権力にそれを強いられ
ていたわけでもないのに−ということを自認しているようなものではないか」。
つまり、このような言明は社会主義陣営の崩壊を逆手にとった詭弁でしかない。
マルクス→レーニン→スターリンとつづく展開は論理的必然であり、マルクスの
責任は「多少はある」程度のものではないはずだ。
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マルクスの現在 単行本 – 1999/4/1
- 本の長さ181ページ
- 言語日本語
- 出版社とっても便利出版部
- 発売日1999/4/1
- ISBN-104925095013
- ISBN-13978-4925095013
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
マルクス主義ではなく、マルクスその人の再評価の気運が盛り上がる中で、柄谷行人、浅田彰、市田良彦らが、最新の研究を踏まえた新しい視点から解説した入門書。
登録情報
- 出版社 : とっても便利出版部 (1999/4/1)
- 発売日 : 1999/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 181ページ
- ISBN-10 : 4925095013
- ISBN-13 : 978-4925095013
- Amazon 売れ筋ランキング: - 581,035位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 18,426位哲学・思想 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1941年生まれ。評論家 (「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 世界史の構造 (ISBN-13: 978-4000236935 )』が刊行された当時に掲載されていたものです。)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年1月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年8月1日に日本でレビュー済み
なぜ秀逸かと言わると困るが、学生時代に該当部分をほんとんど丸暗記して試験にのぞみ、マル経の牙城京大経済学部の経済学原理II(マル経)で優(98点)を叩きだしたからである。
ちなみに卒業まで5年かかったが、優をとった科目はあの授業ぐらいではないか。
ちなみに卒業まで5年かかったが、優をとった科目はあの授業ぐらいではないか。
2007年7月28日に日本でレビュー済み
全体的にマルクス擁護論の本書は、さらにネグリ擁護論ともなっている。。さらに、アルチュセールの「読解」、ネグリのマルクス解釈、そして柄谷のマルクス解釈(カントとの関係)についてのものが収録されているので入門としては良いものだ。
しかし、全く本を書かない浅田彰は、スターリンの「極端な」マルクス解釈、そしてその「実践」の共産主義諸国の惨状について、「その責任をマルクスやマルクス主義に負わせるのは無理がある」といい、ソ連崩壊後の現在、まともにマルクスを「読み直す」時期にきたとする。この発言は、マルクス擁護論者(廣松渉など)の常套句である。ひとつの思想が、人間の生活を左右するものであったならば、やはり、それを考えたマルクスにはおおいに責任があると思う。
入門書としては、おもにマルクスの生涯とマルクス主義の歴史が最初に書かれてあるので、その部分だけでも読む価値がある。
しかし、全く本を書かない浅田彰は、スターリンの「極端な」マルクス解釈、そしてその「実践」の共産主義諸国の惨状について、「その責任をマルクスやマルクス主義に負わせるのは無理がある」といい、ソ連崩壊後の現在、まともにマルクスを「読み直す」時期にきたとする。この発言は、マルクス擁護論者(廣松渉など)の常套句である。ひとつの思想が、人間の生活を左右するものであったならば、やはり、それを考えたマルクスにはおおいに責任があると思う。
入門書としては、おもにマルクスの生涯とマルクス主義の歴史が最初に書かれてあるので、その部分だけでも読む価値がある。
2008年8月20日に日本でレビュー済み
本書は国内の若手マルクス主義哲学者らによる、京都大学での初学者向けの講演をパンフレットにしたものです。
本書の前半部分は初学者向けの内容になっています。ネグリの思想を軸に、現代の世界資本主義(<帝国>概念の前身)を論じていきます。その中で、マルクスの思想形成史、マルクス主義哲学の歴史が当時の政治との関わりとあわせて解説されており、大変わかりやすかったです。また、日本の共産主義の歴史、アルチュセールとマルクス、ネグリとの比較、サパティスタやマイノリティの問題、資本の文明化作用の是非など、興味深いテーマが目白押しで読み応えがあります。
後半は柄谷行人のテキストが中心になります。トランスクリティークを中心に話が進むので、マルクスについても彼の方法論の分析が主となります。
講演録なので全体的に分かりやすく、しかも参加者からの質疑応答もそのまま掲載されているので読みやすいものだと思います。マルクスの、というよりその現代的展開であるネグリと柄谷の紹介という側面が強いのですが、マルクスのアクチュアリティーを感じ取るには大変良い本だと思います。
本書の前半部分は初学者向けの内容になっています。ネグリの思想を軸に、現代の世界資本主義(<帝国>概念の前身)を論じていきます。その中で、マルクスの思想形成史、マルクス主義哲学の歴史が当時の政治との関わりとあわせて解説されており、大変わかりやすかったです。また、日本の共産主義の歴史、アルチュセールとマルクス、ネグリとの比較、サパティスタやマイノリティの問題、資本の文明化作用の是非など、興味深いテーマが目白押しで読み応えがあります。
後半は柄谷行人のテキストが中心になります。トランスクリティークを中心に話が進むので、マルクスについても彼の方法論の分析が主となります。
講演録なので全体的に分かりやすく、しかも参加者からの質疑応答もそのまま掲載されているので読みやすいものだと思います。マルクスの、というよりその現代的展開であるネグリと柄谷の紹介という側面が強いのですが、マルクスのアクチュアリティーを感じ取るには大変良い本だと思います。
2003年2月24日に日本でレビュー済み
マルクス再入門書と銘打たれていますが、ビギナーから哲学研究者まで、耳学問よりも上のレベルまで網羅している良書だと思います。浅田彰のマルクス主義の歴史のまとめは明解ですし、柄谷行人と浅田彰の対談、および柄谷の論文は、NAMとか言い出す前の一番良かったころの柄谷の論考が読めて素晴らしいです。ネグリなど現代のマルクスの展開の紹介本ともなり、文字どおり「マルクスの現在」のタイトルに恥じない良書です。