「学校とは、学問とは、各教科とは何なのか?
それらはなぜ、何のためにあるのか?
そして何を、何のために学ぶのか?(前文より)」
この本はいわゆる「効率的な勉強法」といった、
「しゃらくさい方法論」とは対極にある本だ。
理科を養老孟司が執筆し、
数学を野崎明弘が執筆する、
科学者であり数学者であるかただから当然だろう、これはよく分かる。
(ちなみにこの養老孟司の文章は中学入試で出題されたことがある)。
美術は布施英利、音楽は宇野功芳で、
「なるほど、音楽家や画家ではなくあえて評論家に語らせるわけか」
と納得する。
「道徳」を池田晶子が書いているのもよく分かる。
「その分野が好きでたまらない人に書かせる」という方向性が、
いかにも四谷ラウンドっぽい姿勢である。
が、そこで、
国語・外国語担当が島田雅彦とみた時点で「おっ」と思ってしまう。
社会にいたっては、なんと「ねむの木学園」宮城まり子ときた。
どう考えてもその二人がその科目を教えるというイメージがない。
が、よく考えれば、両方とも文系科目。
「国語や社会とはこういう勉強」という定義付けは意味がない。
編集者もそう考えたんだろうか、
事実、
この二人の文章は強烈な輝きを放っている。
島田雅彦の文章の、
第一章は「言葉とはなにか」、
第二章は「外国語とぶつかり日本語は存立する」。
宮城まり子は、
第一章は「いろんな人間がいるんだ」、
第二章は「生まれて、出会って、死んでゆく」。
島田雅彦は「言葉とは命がけのものだ」と語り、
宮城まり子は「自分が歩んできた人生」についてただただ語る。
宮城まり子の文章には、
「地理」「歴史」「政治」「経済」という単語は、
一度も出て来ない。
そのかわり出てくる単語は「売血、預金通帳、リハビリ、結婚、C型肝炎」である。
私たちの身近にある「社会」とは、
まさにそういうものではないだろうか。
この2人の文章は、
全ての文系科目指導者「必読」と言える。
「死を想え」という副題、
血を連想させる赤い表紙、
時おり挿入される藤原新也の写真。
爽やかさなどに背を向けたその外観をみると、
今どきの学校の教科書などの「麦畑なんか撮った爽やかな表紙」が本当に間抜けに思えてしまう。
「『七人の侍』がそれぞれの教科が持つ『凄み』を、
溢れ出る情熱を込めて書いた(中略)
そこに『生き死に』を感じ取ってほしいのだ。
私たちは若き10代の君たちを信じている(前文より)」
四谷ラウンドと言えば、
「採算を度外視した硬派な出版姿勢(はてなダイアリー)」で、
2002年に倒産した出版社だ。
倒産すべき出版社は他にたくさんあるのだが。
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中学生の教科書: 死を想え 単行本 – 1999/12/1
島田 雅彦
(著)
- 本の長さ218ページ
- 言語日本語
- 出版社四谷ラウンド
- 発売日1999/12/1
- ISBN-104946515410
- ISBN-13978-4946515415
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
何を何のために学ぶのか。「島田雅彦=国語・外国語」「養老孟司=理科」「宮城まり子=社会」など7人の著名人が、知的欲求や根底にある死との対峙などをわかりやすく、かつ刺激的に語りかける。
登録情報
- 出版社 : 四谷ラウンド (1999/12/1)
- 発売日 : 1999/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 218ページ
- ISBN-10 : 4946515410
- ISBN-13 : 978-4946515415
- Amazon 売れ筋ランキング: - 823,429位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1961年、東京都生れ。東京外国語大学ロシア語学科卒。
1983年『優しいサヨクのための嬉遊曲』を発表し注目される。1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、1992年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞、2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞を受賞。著書は『天国が降ってくる』『僕は模造人間』『彗星の住人』『美しい魂』『エトロフの恋』『フランシスコ・X』『佳人の奇遇』『徒然王子』等多数。2010年6月には最新刊『悪貨』も発売になった。
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2015年5月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年5月13日に日本でレビュー済み
「学校とは、学問とは、各教科とは何なのか。それらはなぜ、何のためにあるのか。そして何を、何のために学ぶのか」という問いに、各界の専門家たちが答えます。
ボクが気に入ったのは、「音楽」(宇野功芳さん)の121ページの例話。
ここに二人の人物が居るとしよう。
一人はベートーヴェンの「田園」を耳にしたとき、作曲者の名前や交響曲第六番ということを即座に答えられるが、少しも感動していない。
もう一人は作曲者名も曲名も知らないが、なんと美しい音楽だろうと心から感動する。
いったい、どちらが幸せだろうか。申すまでもない。
これは、信仰生活や人間関係にも、まさに同じことが言えるでしょう。
理屈じゃなく、感動! ここ、大切なんですよね。
ただ、全体としてのまとまりがないのが、本として残念でした。
追伸:
理科好きで、アラ探しも好きなボクは、「理科」(養老孟司さん)の158ページの誤字(誤植)も見逃していません (^_^)
ボクが気に入ったのは、「音楽」(宇野功芳さん)の121ページの例話。
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一人はベートーヴェンの「田園」を耳にしたとき、作曲者の名前や交響曲第六番ということを即座に答えられるが、少しも感動していない。
もう一人は作曲者名も曲名も知らないが、なんと美しい音楽だろうと心から感動する。
いったい、どちらが幸せだろうか。申すまでもない。
これは、信仰生活や人間関係にも、まさに同じことが言えるでしょう。
理屈じゃなく、感動! ここ、大切なんですよね。
ただ、全体としてのまとまりがないのが、本として残念でした。
追伸:
理科好きで、アラ探しも好きなボクは、「理科」(養老孟司さん)の158ページの誤字(誤植)も見逃していません (^_^)