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武部本一郎SF挿絵原画蒐集 (上(1965~1973)) 単行本 – 2006/3/30
- 本の長さ494ページ
- 言語日本語
- 出版社ラピュータ
- 発売日2006/3/30
- ISBN-104947752653
- ISBN-13978-4947752659
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商品の説明
著者からのコメント
画集刊行にあたって 監修 加藤直之
最初にお詫びしなくてはならない。このSF画集には武部さんのご遺族が大切に保管していた原画、そしてぼくと東京創元社が武部さんから購入した原画がすべて収録されているが、武部さんが描かれた文庫本の絵のすべてではない。多くの原画は行方不明になっており、今、それらの作品がどんな運命をたどっているのかまったくわからない。
武部さんの時代、そしてぼくが仕事を始めたばかりの頃、挿絵の原画は「作品」ではなく、「版下」であった。きちんと作者に返却されたものもあるが、印刷が終わった後は捨てられたり、誰かが記念に持ち帰ったり、どこかに紛れ込んだまま忘れ去られたりすることも珍しくなかった。
では、最近の原画の扱いはどうなっているのだろうか。原画は印刷が終わったら即返却されるのが基本である。しかし、多くは画家に返却された時の袋で箱や押し入れに突っ込まれたままになっている(現にぼくが描いた原画がそうだ)。何十年、ひょっとしたら何百年かしたら、散逸してしまうような気がしないでもない。しかし武部さんの絵がそうなってしまったら、とても悲しいことだ。少々遅きに失した感はあるが、今この時点で、何らかの方法で調査・記録しておく必要があると考えた。
本画集は、「絵」を観賞していただくには判型が少々小さくて、細かいところはわかりにくいかもしれないが、いつも身近に置いてすぐに取りだせることを優先した。また、今回あえて原画をランク付けることはしていない。すべてを等しく扱うことにした。なお、<武部本一郎作品について>と題し、解説も書かせていただいた。
印刷用画像の作成は通常スキャナーで機械的に行うのだが、今回は、絵一枚一枚の内容、性格に合わせてカメラで撮影した。当然撮影にあたっては複写する人間の主観が入っている。それはすべてぼくの指示で行なわれた。
まずなにより、画像の解像度よりも「絵」の存在感を優先した。高解像度スキャナーはとても正確に原画の色合いや細部まで取り込むことができる。絵のマティエール(絵肌)、例えば、筆のはけ目の一本一本などは読み取れるが、絵の具や紙の盛り上がりは、色相や明度の差がない限り無視されてしまうことになる。絵は、決して平面ではない。地球や火星と同じように、谷や山脈がある。砂漠のように光を単純に反射するだけの色もあるし(白が混じっている場合に多い)、草原のように半光沢の絵の具もある。海のように透明な被膜が何層にも塗り重ねられた部分もあるのだ。それらは単純に表面からのスキャンだけでは取り込むことができない。カメラによる撮影なら、絵に当てる照明の角度や強さを調節することで、絵が持つ情報はいくらでも加工・演出して強調することが可能なのである。
だが、その方法によって客観的な情報の一部は取りこぼすことになった。原画には、照明や見る角度をその場で自由に変えながらでなければ見てとることができない情報もあるのだ。もし、原画を直接見る機会があったなら、ぜひこのことをご確認いただきたい。
今回収録された原画の中には、最終的には没になり印刷されなかったものも含まれている。
『火星のプリンセス』のジョン・カーターが初めて火星に飛ぶシーンでは、最初、地球と火星の両方が描かれていたが、印刷直前に火星と星空だけの構図の絵と差し替えられた。新しいほうは『火星のプリンセス』の他の絵とは別扱いで管理されたらしく、そのまま行方不明になっている。
他にも、発表された当時とは違っている作品がある。武部さん自身が加筆修正した作品である。ジョン・カーターは黒い髪を短く刈り上げているが、武部さんは、シリーズ第3巻『火星の大元帥カーター』ではこの設定を忘れていて金髪で描いてしまったものがあった。後の版では黒髪に修正されているが、どの時点で加筆されたのかはわからない。
作品の並びは、出版社やシリーズ別ではなく発行順となっている。本当は武部さんが描いた順番で並べたかったが、カバーや口絵、挿絵をどんな順番で描いたかぼくにはわからないし、描き終えてから出版されるまでの期間も出版社や刊行スケジュールの都合で変動があっただろうから、無難なところで一冊ごととした。
文庫に限って言えば、ぼくは武部さんの絵が本で発表された順番で見ている(武部さんの本が出ると同時に買っている)。当時、ぼくは毎日武部さんの絵を求めて書店に通い続けた。武部さんの絵はぼくの人生でもあったのだ。
抜粋
武部さんが好きな画家たち
●不思議な絵
武部さんの絵の中には、極めて特徴のある作品が一定の割合で混じっている。絵の具を使って仕上げた後に、さらにペンやボールペンで背景とはなんの関係もない輪郭線や模様が描き込まれた絵があるのだ。
最初ぼくは、時間が足りなくて途中でそのまま印刷してしまったものだとばかり思っていた。それが決して手抜きなどではなく、意図してそうしたものだとわかったのは、大人になって絵のことをもう少し理解できるようになってからだった。実は、それでもまだ、武部さんは自分のペンの線を自慢したいのだろうな、と勝手に考えていた。
そのうちに、ぼくも勉強のために画集を買ったり展覧会を見に行くようになった。とはいっても、日本人が好きな身近な題材ばかり扱う画家に興味はなく、どこまでもSFやファンタジーの資料になりそうな画家たちの絵だ。
●ギュスターヴ・モローのこと
ギュスターヴ・モロー(1826-1898)という画家の絵の中に、武部さんの不思議な絵の謎を解く鍵があった。ほんとうに一目瞭然。武部さんが傾倒していた画家がいたのだ。武部さんほどの天才が、憧れをもって真似るほどの画家が。普通、好きだからといっても、ここまであからさまに真似ることはない。
武部さんは誰かの弟子だったことはない。ぼくもそうだ。日本の挿絵画家の中には、小松崎茂さんのようにたくさんのお弟子さんがいたような例はある。ヨーロッパの画家の工房や、連載を持つ日本の漫画家のように、引っ張りだこの画家はどうしてもアシスタントが必要になる。しかし、武部さんは常に1人だった。山のように児童書の仕事をこなしたが、弟子をとることはなかった。もっとも武部さんの弟子が務まるような人がいたとも思えないけれど。
ぼくは武部さんの絵に魅かれてこの世界に入ったが、それを生みだした武部さん個人をよく知っていたわけではない。武部さんからお手紙をいただいたことはあるが、出不精というぼくの性格が災いして、生前お会いするところまでいかなかった。
しかし、モローのことがあってからぼくの気持ちが少しずつ変化していった。なぜ、モローの影響を受けたのか。それがなぜ50歳を過ぎてからだったのか。モローの展覧会が日本で最初に開かれたのが1964年だったのと何か関係があるのだろうか(『火星のプリンセス』の絵は1965年に描かれた)。
モローは油彩も水彩も同じように使っていたが、初期の伝統的な油彩画よりも後期の水彩画に傑作が多い。たった1人で弟子もとらず、たくさんの絵を描き続けることになった武部さんにとって、奇麗に仕上げることさえ超越していたモローの水彩画は、武部さん自身がたどり着いた絵柄にも似て、大いに安心できる材料ではなかっただろうか。
モローは象徴派に分類されている。しかし、象徴派の画家で似たような絵を描く人はいない。というよりも、モローの水彩画のような絵を描く人は、世界中のどこにもいないのだ。
ラファエル前派の、あっけらかんとした神話や騎士、美女の世界と違って、象徴派にはもっと暗いところがあった。ラファエル前派がファンタジーなら、象徴派はダークファンタジーやホラーの世界だ。ラファエル前派は神殿がよく似合い、象徴派には墓が似合っていた。「墓」ということならモローも神殿を墓のように描いているから、確かにその分類はぼくの中ではつじつまが合っている。純粋で明るい児童書ばかりを担当してきた武部さんは、モローの絵とバローズの仕事をきっかけに大きく変わることになった。
登録情報
- 出版社 : ラピュータ (2006/3/30)
- 発売日 : 2006/3/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 494ページ
- ISBN-10 : 4947752653
- ISBN-13 : 978-4947752659
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,136,867位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 62,483位アート・建築・デザイン (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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デジャーソリスのたわわに実った巨乳を保存しておきたくて、購入しました。あっ、それだけじゃないですよ。緻密に描かれた挿絵の数々は、卓抜したSF的世界観を構築しています。
冒険とロマンスの世界に浸かりたい人に、お勧めです。
デッサンや人物画を書き始めてわかる武部画伯の卓越した描写力。
自分の好きな画家に小磯良平さんがいるが、万人が認めるデッサンの達人小磯さんに勝るとも劣らないと思われる。
少なくとも、ことファンタジーという実際にはないものを描く上では、武部画伯に勝る人は居らぬ。そう再認識できる原画集です。買いなさい!
資料としては素晴らしいけど、絵を楽しみたい普通のファンには、あまりお勧めできないかなぁ。
版は少し小さめですが、これでもかとばかりにぎっしりとイラストが詰まっています(笑)。
何人かの方も書かれていますが、確かに絵本くらいの大判だったらそれはそれで買いなのです。
でも私のように早川SF文庫の表紙などで(無論デジャーソリスですよ、ふふふ)氏を知った者に
とっては逆に気にならないというか慣れ親しんだ絵のサイズなので、手元に置いて
いつでも開けるこの本の大きさって丁度良い気もします。何かケイブンシャの出す
怪獣図鑑みたいな分厚さが(笑)私は好きだ!
スマホのアプリなどでも氏のグラフィックを楽しめるコンテンツがあるようですが、
まずは文庫本で世界観を盛り立てる氏のイラストを文章と一緒に味わってもらいたいですね〜。
絵のことは良くわかりません。しかし一人の本好きとして、これほどまで記憶に残った挿絵は他にありませんし、だいたいが当時読んだ本のイラストレーターの名前などいちいち覚えていないのにこの人のことだけは覚えている、というのはすごいことだと思いますよ。
デジャー・ソリスは武部さん以外のイラストは認めません。こういう人は、きっと他にもいるんじゃないかな。