サニー=ランドレスは、いまやその人間国宝級の技能を衆人に広く知られ
名実ともにマエストロと呼ぶべき演奏家へと成長を遂げた人物ですが
かつては『(その技量において)もっとも卓越していながら過小評価されている』と
クラプトンに評されるなど、個人名での仕事は長く公となりませんでした。
とはいえ、世がいつまでもこの輝きを見過ごすはずもありません。
若き日にスコッティ=ムーアから影響を受けたという彼が、エルヴィスゆかりのRCAより
初めて大々的に世に問うたのが、本作『OUTWARD BOUND』です。
タイトルには、境界線をこえ、新たな出発をする、外の世界で活動するという、
深い意味と決意がこめられています。
文字通り、本作はメジャーシーンでの第一作であると同時に
『SOUTH I-10』そして『LEVEE TOWN』で完結する三部作の第一部ともなり
その演奏の伸びやかさ、清潔感にあふれていながらつややかな歌声、
楽曲のレベルの高さ、どれをとっても秀逸で、きわめて完成度の高いものです。
氏の演奏スタイルは試行錯誤を経て、近年では生田流の琴爪を思わせるサムピックで
まるで筝曲のようなフレーズを緻密に弾きこなすというものに変化してきていますが
この当時の明るい開放感に満ちた演奏も味わい深く、曲も真珠の粒のように美しいのです。
あらゆる意味で本当に価値ある、優れた作品といえるでしょう。
あらたな出発、希望の船出をうたう表題曲からは、雄大な海のうねり、大河の流れ、
そして滴り落ちる雫のきらめきさえ、ありありと感じることができるでしょう。
真のエアマスターの力作です。新しい門出のプレゼントにもお勧めできるアルバムです。