米国フロリダ出身のデスメタル・バンド、Obituaryが1997年に出した5thアルバムです。
前作リリース後、ギターのアレンがCannnibal Corpseの初代ヴォーカリストでもあるクリス・バーンズらと組んだバンド、Six Feet Underでの活動が本格化したこともあり、本業バンドであるObituaryでの活動が停滞。そのまま解散の可能性まであったそうですが、結果的には前作と変わらぬラインナップでの本作リリースとなりました。タイトル通り「死の淵から舞い戻った」作品と言えるでしょう。まあ結局この後いったん解散するんですけどね。
本作の印象としては、音楽面ではもう完全にデスメタルからは脱却しています。ハードコア度がぐっと高まり、ジョン・ターディのヴォーカルも従来の嘔吐ヴォイスからスタイルを変え、腹から振り絞るようなストロングなシャウトスタイルになっています。しかし楽曲のバリエーションは過去最高と言っていいほど多彩。2分台で直情的に疾走するハードコア曲。タメを効かせたビートがうねる曲。ラッパーとの共演曲など実に多岐にわたり、当時の主流の1つだった「極悪系ヘヴィロック」としても十分通用する内容です。
#1 "Threatening Skies" はスラッシュ的な刻みリフで疾走するハードコア寄りの曲。ジャケットの印象とは裏腹に、快活さすら感じます。
#5 "Download" は序盤はタメを効かせたグルーヴパート、中盤はハードコア的に疾走し、終盤は最初のテーマに戻るサンドイッチ構造。中盤の疾走パートのリフがどこかラフでもっさりしてるんですが、シンプルな中にも謎の説得力があり、ここはやはりベテランならではの貫禄を感じます。
#6 "Rewind" はシンプルな8ビートのミドルテンポなんですが、リフが極悪。たまにスローパートを織り交ぜてくるんですが、これがまた人間をすり潰してる感じがしてグッド。荒涼としたギターソロと、そのバックを支える人間を切り刻んでるようなリフも好き。
ラストの#11 "Bullituary" はラッパーとの共演曲。ヒップホップ由来のバウンスビートに弾性率の高いリフ。当時の用語でいうところの極悪系ヘヴィロックを体現したような曲で、実にかっこいい。
Obituaryはよく「時代の先鋭集団」というキャッチコピーで紹介されたりしています。デスメタル自体がまだまだ新鮮で珍しかった時代から始まり、Obituary流のデスメタルを3rdあたりで確立した後はさらに音楽性の幅を広げるべく、果敢かつ貪欲にいろんな音楽を吸収/放出して前作・本作が産まれました。
実際90年代後半から2000年代の初頭にかけては、ニュースクールハードコア系のタメの効いたリフにラップヴォーカルを乗せる手法が爆発的に流行ったわけで、Obituaryというバンドは早くもその可能性に目を付けていたということ。デスメタルに固執することなく、かなり柔軟な先見性を持っていたことがわかります。
一度は解散の危機にあったものの、再びメンバーが集結し産まれた本作。しかし本作リリース後、結局解散。8年後の2005年に再結成するまで、本作がObituaryのラストアルバムだったのでした。