既に語り継がれてきたジャズの名盤のひとつ。
その中のファイヤー・ワルツという曲を聴いてみよう。
時は深夜の丑三つ時。場所はとある埠頭の飲み屋街のはずれ。そこに悪たれ炎の3人組が現れる。世の中の為にならず、何か世間を騒がすようなことを企んでいる。(冒頭のテーマ曲)
昼間の打合せどおりやるんだぞ。ドルフィーが目で指し示す方向には燃料倉庫があり、運良く窓から細いロープがぴんと張って運河を隔てたこちらまで伸びている。しめしめ。
炎の道をつけるんだ。このところまったく活躍のない3人は、いつも種火のように小さく潜んでいるしか能がない。
ここらでひとつ鬱憤を晴らそうじゃないか。リトルが苦々しく見つめる先には遠く消防署の赤色灯と消防車がぼんやりと浮かび、同じくそれを見ていたウォルドロンも急いで相づちを打つ。
まずドルフィーからロープに飛び乗る。火薬の火花が出自のドルフィーは、まことに調子がいい。どっちに火柱を吹き上げるのか見当もつかない。バチバチ。バチバチ。ロープの上であっちによろよろ、こっちによろよろ、飛び跳ねながら高く高く炎を吹き上げる。(ここはとにかくドルフィーのアルトサックスをご堪能あれ)だが、残念。そのうち向かい風が吹いて消えてしまう。(ソロ交替、聴衆の拍手パチパチ)
次にリトルが飛び乗る。アーク溶接の火花が出自であるリトルの番となったら、その眩いことといったらない。辺りただよう黒煙が一瞬のうちに明るい光に浮かびあがった。
リトルは向かい風に負けまいと着実に歩を進める。(風にあおられ、火の粉をきらきらと運河に落としていく様をご堪能あれ)だが、しまいにはこちらも突風に吹き消されてしまう。(ソロ交替、聴衆の拍手パチパチ)
次にウォルドロン。彼の出自はとあるビストロのオーブンでくすぶっていた埋み火である。彼は赤い炎の舌をちらちらと見せて、慎重に風向きを窺いながらゆっくりと歩を進める。進んだり戻ったり。戻ったり進んだり。だが、戻る、戻る、戻っていくぞ。(風にあおられて戻っていく。けれども健闘して少しずつ前進していく妙をご堪能あれ。あと炎のめらめらと燃える描写をご堪能あれ)けれども慎重に歩を進め、そうこうしているうちにウォルドロンはロープをなんとか渡りきってしまう。
するとそこへ、さっき消えたはずのドルフィーとリトルも現れる。(冒頭と同じテーマ曲、聴衆の拍手パチパチ)
燃料倉庫は目の前だ。悪たれ炎の3人組、舌なめずりしながらそちらに向かっていく。
あとはどうなることやら、こうご期待。。。(演奏終了そして聴衆の拍手パチパチ)
炎の燃える様子を想像しながら聴いて下さいね。