まずは、ジャケットの暖かい油絵に心惹かれて手に取ったロケットシップの唯一の1st(1996年作)。
elのマイク・オールウェイが彼らを気に入り、国内ではトラットリア関連のifレーベルから発売となった今作。こりゃあきっとモンドなラウンジ系の音なんじゃないかと勘ぐったのは見事に外れ、彼らは思いの他、正当なギターポッパーだったってわけです。解説などに、マイブラ、ステレオラブに通じるディストーションサウンドや音響効果についていろいろと書かれていますが、本質は良質のメロディを奏でるギターポップバンドです。そこを軸として、音の歪みや伸縮を効果的に装飾している感じです。アメリカのバンドですが、あまりそれを感じさせない洗練されたメロディ感覚を持っていて、その辺りが90年代後半にかけて多発したUSインディーギターポップ勢とは大きな差異があります。また疾走感のある曲から、ゆったりとした浮遊感溢れる曲まで、実にいろいろなタイプの曲を書けるというのも強みで、曲間のつなぎも見事で、メリハリがついています。人懐っこいポップなメロディを聴くと、案外ティーンエイジ・ファンクラブなんかと作曲の資質が似ているようにも思います。
全くどうしてこれ1枚しかないんだろうというくらい完成度は高いので、本当にもったいないです。メンバーの女性は、ホリデイ・フライヤーというもっとずっと爽やかなバンドでも活動していましたが、こっちと比べると、どうしても今一つパンチがない気がします。やはりリーダーのダスティンに、ぜひバンドを復活して頂き、幻の2ndアルバムを作って頂きたいものです。