1998年、Michael Breckerの作品です。
前作に続き、本作もストレートなアコースティック・ジャズ・アルバムですが、
前作が、豪華メンバーと完成度の高い楽曲で決めてきたのに対し、
今回は、気心の知れたレギュラーバンドで自由奔放に楽しみながら作った感じです。
ちなみに、メンバーは、
Michael Brecker (T・Sax), James Genus (B),
Jeff “Tain” Watts (Dr), Joey Calderazzo (Pf)のレギュラー4人に、
Don Alias (Perc)を加えた5人。
アットホームで無駄な力が抜け、その分緩急の振幅があり、プレイは充実。
意思の疎通もピッタリ。
スポーツでいうところの”ホームグラウンドで、のびのびとしたプレイ”
という表現がよく似合う作風です。
楽曲は、
”適度に覚えやすいメロディを配しながら、熱いインタープレイを聴かせてくる”ので、
普通の人に入りやすく、通の方にも聴き応えがあると思います。
(1) のイントロは、前作と対照的なくらい軽いSaxで拍子抜けしますが、
テンポの速い(2) “Two Blocks from the Edge”で、一気に集中が高まります。
急き立てるようなドラムに、Sax・Pianoがヒステリックな音を上げる。
その独特のスリル感やクール感は、古いサスペンスやスパイ映画を思わせます。
(3) “Bye George”は、前作の雰囲気を引き継いだミドルテンポの曲。
楽曲・演奏共、じっくり堪能するのに丁度いいテンポで、心地よい。
(4) “El Nino”は、ラテンフレーバーの1曲。
”のどかで艶やかな雰囲気から情熱的に”という展開が、波のようにやって来ます。
(3)(4)くらいまで来ると、すっかりこのアルバムにはまりますが、
深くビターな味わいのバラード(5) “Cat’s Cradle”、
ロマンチックで美しいバラード(7) “How Long ‘til the Sun”も素晴らしい。
この2曲でのSaxには、更に深く聴き入ってしまいます。
このように”自由奔放・ひたすら充実”という感じが、
アルバムラストの “Skylark”(アメリカ盤未収録曲)まで続きます。
Michael Breckerファン、Jazz Sax好きには、もちろんオススメです。
Jazz Saxにあまり馴染みのない方には、
前作『Tales from the Hudson』の方が、分かりやすくて良いと思いますが、
前作を気に入り、聴き込んだら、本作にも手を伸ばしてもらいたいです。
「前作とは違う・・・けど、これも良い」という経験ができるでしょう。