74年発表の6作目。ポリドールに移籍してのアルバム『宇宙の子供』からの曲を中心に演奏しているグループ初のライヴ盤。ハーヴェスト時代の彼らは重厚なオーケストラがバックについていたが、このライヴではメンバー4人のみとなっており、そのむき出しの演奏が聞きどころ。プログレ・ファンには全編で使用されるメロトロンやミニ・ムーグのサウンドが本作の一番の魅力だろう。特にスタジオ作ではほとんど使用されていないメロトロンの多用はオーケストラの代用が主な目的ではあるのだろうが、本作においては楽曲に新たな魅力を加えているようにも思う。何にしても寂れたメロトロンの響きはプログレ・ファンの胸を熱くするものである。
1.はおどろおどろしいギターにお化け屋敷の効果音のようなドタバタ・ドラム、そしてそのバックに薄ら乗るメロトロンとイントロからしてプログレ仕様。闇から抜けるように穏やかなヴォーカルが登場して朝日のような爽やかさが感じられる一瞬がまずは聞き物。2.はギター・カッティングとドラムスがずっしりとしたリズムを刻む中、万華鏡のように響くメロトロンが入るイントロからして目眩がしそう。その重たいリズム隊とメロトロンが、哀感の強い歌メロと相成って楽曲を重厚なプログレ・バラードに仕上げている。
演奏は総じて荒々しく極めてロック的。どちらかと言えば上品で悪く言えば軟弱なイメージのある彼らだったが、本作を聞けばそれだけが本質でなかったことは容易に理解出来る。ギターはほぼハード・ロック仕様のヘヴィなもので、ドラムスは後ノリで思いっきり叩きまくっており、この2パートの比重が極めて高い(ベースは難しいフレーズを極めて安定したプレイで聞かせている)演奏となっている。そこにメロトロンが流れる様は完全なプログレ仕様であり、単なる1グループのライヴ盤以上の魅力がある。メロトロン/プログレ・ファン必聴の作品だろう。