1980年代、過激なメタル・パーカッションで、英国インダストリアル・ミュージックの注目株となったTest Dept.。
1991年にリリースされた、おそらく通算13枚目のアルバム。
クラシックの素養がほとんどないままポピュラー音楽へ進んだ人に時折見掛けがちな、道半ばにしての路線変更か、時代とともにサウンドも変化し、全編擬似モダーン・クラシック的な内容になってしまった。
全体をMovement と題されたⅠ~Ⅴまでに分離、計12曲で構成。
短いイントロっぽい曲の後、英国人にとって縁が深く、EL&Pもアルバム『Brain Salad Surgery』(邦題『恐怖の頭脳改革』)でA面トップに収めていた「Jerusalem」がスタート。
しかし、これが、全体的に意外と悪くない。
ところどころによいメロディが出て来るし、壮大なオーケストレーションと男女混成合唱隊による勇猛果敢なコーラスが実にドラマティック。
得意のメタル・パーカッションはかなり控えめだが、癖が強いナレーション(アジテーション?)と伝統的な木管楽器(バグパイプ)使用、要所では各種ノイズの挿入も健在だし、これまでのTest Dept.のイメージが垣間見える。
スケールの大きさを感じさせる10、12は充分にカタルシスを与えてくれるし、思えば、1960年代から英国大衆音楽のD・パープルやP・ハルムなどはクラシック畑とコラボをやりたがっていたし、そんな意味でも貴重な資料か。