バンドの公式サイトで新品が比較的安価で購入できます。
Cardiacsのアルバムは長らく入手困難な状態が続き、中古品も高騰していました。しかし現在はバンドの公式サイトの通販が再開されたので、amazonよりそちらから購入した方が安く手に入ります。Cardiacsで検索してみてください。(amazonレビューで他サイトの利用を勧めるのは筋違いかとも思いますが、余りに高額なので…)
Cardiacsは1977年に結成されたイギリスのロックバンドで、プログレとパンクの要素を兼ね備えた独特の音楽性はしばしばPronk(Progressive + Punk)と形容されます。リーダーのTim Smithはこの呼称を嫌っているようですが、なかなか面白い造語なのではないでしょうか。また、XTCやDeaf School、Split Enz等のニューウェイブ系バンドにも通じるひねくれたユーモアとポップセンスも随所に見られ、彼らの楽曲は奇抜ながらも魅力的なメロディーにあふれています。
Sing to Godは96年にリリースされた7thアルバムで、90分近くに及ぶCD二枚組の大作です。Tim Smithが創り出す奇天烈ポップワールドは本作でも全開で、特にDisc 1の充実度には目を見張るものがあります。ネジが外れたQueenのような小品Eden On The Airから始まり、Dog-Like Sparky、Fiery Gun Hand、Bellyeye、Manhooなどの素晴らしい曲が次々と飛び出して息つく暇もありません。
Disc 2ではキャッチーな曲は若干減るものの、冒頭のDirty Boyは特筆に値します。目まぐるしい展開がある曲ではありませんが、とにかく聴いてみてください!何重にも塗り固められたギターサウンドがうねりまくり、耳をつんざくような多重コーラスが上昇と下降を繰り返す様は圧巻です。轟音がピークに達する終盤の2分強は本作のハイライトの一つでしょう。この他、過去のアルバムにも収録されていたNurses Whispering Versus等も個人的には大好きです。
一般的に、Cardiacsがバンドとして最も充実していたのはキーボードやパーカッション、サックス奏者が在籍していた6人編成の時期(84〜89年)と言われているようで、この頃にリリースされたA Little Man and a House and the Whole World Window、On Land and in the Seaといったアルバムは非常にクオリティが高く、ファンの間で人気があります。これらに収録されたR.E.S.、The Whole World Window、In a City Lining、Buds and Spawn、Baby Heart Dirt等の曲はPronkと呼ばれる彼らの音楽性を知るにはうってつけの作品だと思います。
一方、Sing to Godを含めた90年代のアルバム群(他にHeaven Born and Ever BrightやGuns等)は80年代の黄金期を支えたメンバーの多くが脱退し、バンドがやや縮小した中で制作されています。基本的にはツインギター編成による分厚いギターサウンドが目立ち、以前の作品に見られた70年代プログレ的な要素はやや後退した印象です。ただ、本作では作曲・編曲にも関わったギタリストJon Pooleの手腕もあってか、カラーは違えど80年代にも全く劣らない楽曲が揃い、質・量ともに申し分ない内容となっています。バンド後期の代表作と言っていいでしょう。
余談ですが、つい先日放送されたNHK-FMのプログレ系特番でNorth Sea Radio Orchestraというチェンバー系グループが紹介されていました。NSROにはCardiacsの80年代の黄金期を支えたキーボーディストWilliam D. Drakeらも参加しており、楽器編成はかなり異なるものの、音楽的に共通する部分があります。この他、Spratleys Japs、Knifeworld、The Sea Nymphsなど、Cardiacsの関連バンド/派生プロジェクトといえるグループは数多く存在しますが、そのほとんどが日本では無名のバンドばかりなので、この系譜を辿るのも非常に面白いです。