このバンドがデビューしたときの事は良く覚えている。当時僕はHM/HR党で、BURRN!誌を愛読していたのだが、伊藤セーソクさんが発見して大騒ぎしていたのだった。しかし、伊藤さんは、このバンドをHR/HMの範疇でくくりたかったようで、それは当時の解説・ライナーでも明らかだ。要は、グランジ・オルタナ的な粗さ、刺々しさ、モダンさを持っているのは確かだが、これは間違いなく正当的なHRバンドだと・・・。要は、ロッキン・オン的雑誌、評論家のくくりで語られたくなかったように記憶している。で、僕もその当時、HRファンで、いわゆる流行りのいまどきロックに背を向けて、B!誌が言うような、「古き良きHR」として、このDIZZY MIZZ LIZZYを捉えていた。しかし、最近は、もっと幅広く、どんなジャンルの音楽も聴くようになって、当時B!誌が、自誌で取り上げるようなバンドだけが、メロディアスなロックではない。例えば、オルタナの範疇になる、Ben Folds FiveやElliott Smithなんて、下手な正統派HRよりもよほどメロディックで大好きだ。しかし、もしかして、このバンドも、そういう、「メロディアスなオルタナ」的くくりで、ロッキン・オンなどで、もっと大々的に取り上げられたほうが(当時、そういう雑誌がどの程度取り上げてくれたのかは知らない)、このバンドにとっては、もっと売れたのではとも(少なくとも日本では)思う。もちろん、それほどメジャーにならなかった理由は、2枚で解散したせいと、2ndはこの1stよりは落ちるからだが。ただ、本作も、アルバムを通して、それほど超絶クオリティということではなく、アルバム前半のテンションが後半失速気味。しかし、前半のテンションは素晴らしく、1〜7への流れは神がかりだ。多くのファンは、哀メロで疾走する「グローリー」で一撃必殺されたと思うし、僕もそうだが、しかしむしろ「ラヴ・イズ・ザ・ルーザーズ・ゲーム」のほうが凄いと思う。現代に蘇ったビートルズといった趣の、意表を付くリズムチェンジや曲展開、コンパクトかつ高度な演奏は圧巻の一言。さらに「シルヴァーフレイム」も、あまりに切ない歌メロが炸裂する名バラードで、死ぬほど口ずさんだ。しかし、トリオ編成でシンプルな割には、超ハイテク、しかし、HR的な丁寧さよりも、むしろぶっきらぼうですねているような、独特の歌と演奏スタイルが特徴で、それはどちらかというと、先述のBen Folds FiveやElliott Smithなどに近いフィーリングだ。そういうジャンルのファンは、どのくらいDIZZY MIZZ LIZZYのことを知っているのだろう?もっと広いジャンルから、再評価してほしいバンドの一つだ。
※その後、懐かしくなって聴き返して、後半テンションダウンと書いたが、そこまでではない。後半が駄曲とかいうのではないと思い返した。ただ、前半に強烈な曲が多いのと、1〜7までがかなりバラエティ豊かなのが、後半やや単調気味とは思う。ただ、失速というより、結構後半の曲の勢いは、むしろある。ただ、前半がビートルズ的哀愁ポップが支配的なのに対して、後半はレッド・ツェッペリン的なグルーヴィHRが支配的になるかな。弾むようなグルーヴとグイグイねじりこんでくるようなリフは魅力的。曲数を12曲くらいに絞り込めばさらに名盤だったのかも。