誤解を恐れずに言えば1990年を代表する、Prefab Sproutに拮抗した瞬間のマジックのようなアルバム。
「Raintown」がロングヒットしている中でのリリースとなって全英初登場で1位、シングルも5曲カットされて、③(全英8位)、②が同18位、⑧が14位、①が21位、④が28位と全てトップ40入り、なのだ、まさに国民的アルバム。
1stのリリースから2年、静謐で陰影そして美しい旋律に加えて、諧謔と反抗、そしてパワーを強く感じさせる。ツアーやステージ活動で労働者の街・グラスゴー出身ならではの逞しさを身に着け、上品ではありながら音の厚みを感じさせる。Disc2、3に収録されたライブでもバンドの勢いと当時の英国における立ち位置を想像させる。1stのセンチメンタルな雰囲気からすれば、まさに成功と自信で強くエモーショナルなロックバンドへと成長した。(ただ、そこが日本人的には好みの分かれるところ)
とは言え、このDeluxe Editionにはドラマチックな「OOH LAS VEGAS」というドラマ仕立ての7曲が収録され、この荘厳な美しさは1stの出来を大きく凌駕するもので、このシリーズのハイライト、と言える。ボーカルのリッキーのセクシーなボーカルも、紅一点ロレイン・マッキントッシュの流麗なボーカルも、デュエットも素晴らしい。
エンジニアはPhil Kinrade、主にEdselやHarmlessでリマスタリングを担当しておりアズテクやジザメリからドナ・サマーやChangeまで幅広く手掛けている。90年というデジタル録音技術的には発展途上の時期のサウンドに見事な厚みと暖かみ、膨らみをもたらし、リマスタリング作品としても実に優秀、少々ボリュームを上げても耳が痛くならない、91点。
いずれにせよPVが見れるDVDを含めこれはマストバイなDeluxe Editionだ。