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![Speak No Evil [12 inch Analog]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61FA1lPP1kS._AC_UL165_SR165,165_.jpg)
モダン・ジャズを代表するテナーサックス奏者のうち、ソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンに比べると、ウェイン・ショーターは分かりにくいという印象を受ける。ボクの少年時代を回顧してみても、マイルス・デイヴィスがロリンズと共演した『バグス・グルーヴ』のB面（LPレコードの）やコルトレーンと共演した『Kind of Blue』は飽きることなく聴いたが。ショーター時代の録音はそれほど聞いてはいなかったと思う。もちろん『マイルス・イン・ベルリン』や『ESP』は好きだったが、ショーター色の濃い『ソーサラー』などはよく分からなかった。プレイヤーの気質も異なる。ロリンズが天才肌、コルトレーンが努力型だとすれば、ショーターは学者肌というか理論家であり、何か理論的な課題を解決するために作曲しているように聞こえ、理屈をこねくり回して作られたようなメロディに魅力を感じなかったのかもしれない。それだけに、歌手のJujuがショーターの作品から自分の芸名を取ったというエピソードを聴いたときは、「やはり鋭い感性の持ち主はいるのだなぁ」と感心したのだが、ボクも一度ショーターを真剣に聴かなくてはと思うようになった。
本作の録音メンバーはショーターの他、マッコイ・タイナー(p.)、レジー・ワークマン(b.)、エルヴィン・ジョーンズ(ds.)というコルトレーンを支えたリズムセクションだ。ベースがジミー・ギャリソンだったらもっと良かっただろうけれど、レジー・ワークマンはヴィレッジ・ヴァンガードのライヴにも参加した強者であり、並のベーシストを遥かに超える経験値の持ち主だ。実際、一曲目のJujuのイントロはテナーサックスが聞こえるまでの数秒間ジョン・コルトレーン・カルテットのように聞こえる。コルトレーンのリズム隊を背にしたウェイン・ショーターのプレイは豪快だが、この時期のショーターはマッコイ、エルヴィンよりもハンコック、トニー・ウィリアムズの方が似合っているような気がする。コルトレーンのリズム隊に欠けているのは、ハンコック、カーター、ウィリアムズのスピード感、疾走感だ。「マイルスさえ聴いていればよい」という中山康樹氏の主張を思い出す。
本作は1964年8月3日録音。この作品の録音以後、周辺で多くの歴史的な名盤が録音されている。
9月25日。ショーターはマイルス・デイヴィス・クインテットに加わり、マイルスとともに『マイルス・イン・ベルリン』を録音。
12月9日。マッコイとエルヴィンはコルトレーンとともに『至上の愛』の録音に臨む。
翌年1月。マイルスとショーターは『ESP』を録音。
このように振り返ると、『Juju』は、マイルス・デイヴィスの新クインテット結成直前にしてコルトレーンの『至上の愛』録音直前というジャズ史が大きく前進しつつあった時期に録音されたショーター初期の代表作であり、ショーター自身がこのジャズの前進に大きく寄与していたことを示す作品と言えるだろう。この先に登場するのは電化サウンドとジャズロック、非妥協的なフリー・ジャズである。さて、ボクが聴いているのは1998年にリマスターされたRudy van Gelder edition。いつもながら良い仕事をしている。50年以上前の録音を透明感あふれる音で聴くことができる。
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