Rupert Hineが結成したQuantum Jumpの2nd アルバム。
発表された1977年頃はすでにプログレのブームが去り、ニュー・ウェイヴ、パンク一辺倒の時代で、過去の大物アーチストが次々とレコード契約を切られ、例えばカンタベリー勢ではDaevid AllenやNational Healthでさえ契約レーベルを探していた時代であった。そんな時期にElectricというマイナー・レーベルからひっそりと出された本作がほとんど話題にならなかったのは無理もない。(Electricは当時英Deccaの傘下だったが日本盤LPは発売されなかった。内容的に素晴らしいアルバムでも時流に乗らないと埋没してしまう典型的な一例でもある。)
R.Hineはグループ結成前にPurpleから2枚、解散後にA&Mから3枚のソロ作品等も出していて、そのどれも駄作ではないが、内容的には本作が飛びぬけて突出している印象を受ける。初期のソロ作品より明らかにポップになっており、ニュー・ウェイヴの味付けも少し加えられ普通のポップスを装っているが、根底にあるのは間違いなくプログレである。
特に秀逸なのは(2)"Seance"〜(3)"Barracuda"あたりの流れで、これほどヴィオラを上手く使ったロックのアルバムは一時期のCaravanとChunky,Novi & Ernieぐらいではないかと思う。また数曲で感じられるPenguin Cafeぽいアンサンブルはそれもそのはずで担当しているのは本家P.CafeのSimon Jeffs本人である。ゲスト参加しているElkie Brooks(女性ヴォーカル)もいい味を出している。
プロデューサーとしては手がけたCaravan,Kevin Ayers,Cafe Jacques,Howard Jones,Fixx等で一定の評価を得ているが、本作は間違いなくアーチストとしての彼の代表作であると思う。(ただしQ.Jumpの1stは曲そのものの出来が今一歩であり、3rdは前2作からのRemix曲で3曲が本CDのボーナス曲として収録されている。)
なおジャケットについて触れておくと、本CDのジャケットはオリジナルLPの一部を拡大・改変したものでオリジナルの少し人を喰ったようなとぼけた味が伝わらないのは残念である。
追記:右下に水着の女性がいるのが元々のジャケットで新たにそのオリジナル・ジャケットでEsotericから再発される模様。