平凡なポストロック・バンドと較べると、まず音のバラエティが圧倒的に広く豊かなことが違いとして挙げられるが、最大の特徴としてはアダム・ピアースという人がドラマーのためかギターないし鍵盤楽器のコードを出発点にして曲が作られてないので、結果的に非常に楽曲の自由度が高い構成の曲が多い点が挙げられる。
多くの凡庸なポストロック系インスト・バンドの場合、リード楽器のメロディが実は歌メロを代替しているため、単に「歌えないから」インストをやってるようにしか聴こえないことがあるけれど、このバンドの場合は音の共鳴とリズムから音の塊を作り上げているために、「リード楽器&その他のパート」「Aメロ・Bメロ・サビ・間奏&ソロ・再びAメロ…」といった古典的な楽曲構造を取っていない。で、かといってメロディがおざなりかというと、ミニマルに散らばった一つ一つのフレーズのフラグメントがキラキラ輝いているところが奇跡的ですらある。抑揚を欠いたクールさの中にリズムの作り出す展開が確実にコアの部分のパッションを伝えてくるし、フレーズの微熱感と透明度も申し分ない。
「ポストロック」という言葉の内実がよく分からなくなっちゃった人は、是非この作品を聴いてほしい。