スウェーデン出身デスメタルバンドEntombedが1990年に出した1stアルバムです。
結成は1987年。当時はNihilistというバンド名でしたが同名バンドの存在を知り、1989年にEntombedと改名。改名後第1弾となるアルバムです。メンバーは1971~1973年生まれなので、本作の時点では17~19歳。Entombedに限った話ではないですが、当時のメタルシーンではこういった若者たちが、デスメタルという、当時としては全く斬新な音楽を創り出し、世に広めていった。これは本当に凄いことだと思いますよ。
本作に入っている全12曲中、実は8曲がNihilist時代のデモ音源にも入ってる曲なんですが、当然ながらこちらの方がはるかにかっこよく、音質もクリアに仕上がっています。このギターの音が、ヘヴィながら芯があり実にかっこいい。スラッシュ/ハードコア由来の直球的突進力に、ドロドロジメジメとした陰鬱さを加えて放出したのがこのアルバム。後にデスメタルと呼ばれるジャンルのスタンダードというものを創り上げた、画期的な作品です。
タイトルトラックの #1 "Left Hand Path" は6分越えの大曲。激速2ビートで走りまくる前半部とメロウな後半部に分かれます。疾走パートとスローパートのテンポチェンジも頻繁で、ただ突っ走るだけでなく起伏やドラマ性を持たせているのもポイント。中盤の冷たいシンセによる静寂パートで曲が終わるのかと思えばそこから抒情的なコード進行&美しいギターソロが展開。これもうメロデスです!!この人たちのセンスはやはりただものではなかった。
#3 "Revel in Flesh" は聴きようによってはダンサンブルですらあるやたらノリの良いリフが特徴の疾走チューン。ブラストビートもここぞという場面で効果的に使われており非常にかっこいい。テーマとなるリフをずーっと繰り返している中、3分02秒あたりで1回だけミュートで「ダダッダダンダン♪」となるところが好き。
#7 "Bitter Loss" はロックンロール的なノリの野蛮さと汚さが際立つ曲。後のデス&ロール路線のわずかな片鱗が見て取れます。
若さゆえの勢いが迸っている初期デスメタルの大名盤。しかし今聴いても十分鮮烈でかっこいい。デスメタルにありがちなドロドロ感よりも疾走感やリフのかっこよさが前面にでており、80年代のスラッシュやハードコアをベースにさらに1段上の過激音楽へと発展させた彼らの感性をひしひしと感じます。