フランスを代表する名指揮者ピエール・モントゥーは、1875年パリに生まれ、パリ音楽院でヴァイオリンを学び、30才にして指揮活動を開始。36才の1911年にはディアギレフのロシア・バレエ団の指揮者となり『春の祭典』を初演して歴史に名を残す(現役盤も大変な名演である)。晩年の1961年からはロンドン響のシェフを務め1964年に没した。本盤は、このコンビによる1962年の収録。これだけ見ても大家の技に期待はふくらむ。
伸び伸びとして、軽やかな響きである。屈託がなく、各パートの団員が演奏をこよなく楽しみながら音楽を愛している雰囲気が伝わってくる。ゆえに、リスナーに至福の時間を届けてくれる。モントゥー老練なる腕はけっして表には出ずに、聴き進むうちに、上体が自然に左右に揺れるような、柔らかな心地よきリズム感が支配する。ふと、”そうそう、これは最良のバレエ音楽だったんだ”と気が付くが、そんな呑気な感想も許してくれそうな大きな抱擁感ある演奏である。