blue noteでの記念すべき第1作。ソプラノとストリッチの2つの管を時に同時に操る事で知られる。blue noteの制作陣がまだ安定している時期としてもこれは異彩を放っている。billy gardnerのオルガン、grant greenのギター。ドラムにはdonald baileyが起用されている。下積み時代の長かったbraithがこの上なく満足行く技量の演奏家を雇い、満を充たしての吹込みだった。
gardnerは後にjohnny hodges、houston personとも吹込みを行ったソウルジャズの捨てがたい奏者で、この分野のオルガニストに特有の饒舌さ、くどさがなく抑制した中でソウルネスを醸し出す好センスの持ち主だ。
braithは実のところ作曲、編曲、アンサンブル全体を冷静に見るプロデューサー的な感覚にも恵まれている。“poinciana”は見事で、他のジャズ盤でこういう粋な編曲は聴けない。ゴスペル調のbraith曲“home street”は2管同時吹奏で独特なダーティな音色が効果をあげる。そして“mary had a little lamb”(童謡“メリーさんの羊”として一般的だ)も完全にジャズチューンとして息を吹き込まれ、非常にシリアスだ。特異な吹奏スタイルがroland kirkとよく比較される所以だが、音楽性は全く似ていない。“mary…”のソロはornette colemanを思わせるもので、彼のアドリブもよく聴いて欲しい。これだけ完結した個性と中だるみのないプレイをする者もそうは居ない。実は強かな技量の持ち主である。