1950~60年代のトロンボーン奏者のマシュー・ジー。その唯一のリーダーアルバムのCD復刻盤である。録音は1956年8月22日(クインテット)、1956年7月19日(セプテット)、いずれもニューヨーク市で。手元にあるのは2006年発売の20ビットK2スーパーコーディングの紙ジャケット仕様のCD(2000年発売のCDと同一)。
曲#1~#5はクインテットで、トロンボーンのマシュー・ジー、アルトサックスのアーニー・ヘンリー、ピアノのジョー・ナイト、ベースのウィルバー・ウエア、ドラムのアート・テイラーの5名。
曲#6~#8はセプテットで、トロンボーンのマシュー・ジー、トランペットのケニー・ドーハム、テナーサックスのフランク・フォスター、バリトンサックスのセシル・ペイン、ピアノのジョー・ナイト、ベースのジョン・シモンズ、ドラムのアート・テイラーの7名。
低音の楽器が好きなので、トロンボーンもJ.J.ジョンソン、カイ・ウィンディング、カーティス・フラー、スライド・ハンプトンなどよく聴いている。ふと目に留まったのがマシュー・ジー。しかし彼の名前があるアルバムはこれと、『ソウル・グルーヴ』(ジョニー・グリフィンとの連名)ぐらいしか出てこなかった…。
#1「アウト・オブ・ノーホエア」スタンダードの1曲。トロンボーンがテーマのアンサンブルから入って、ソロがトロンボーン、テナーサックス、ピアノと続き軽いタッチのアンサンブルで終わる。
#2「四月の思い出」ベースのイントロからトロンボーンのテーマに。ソロのトロンボーン、テナーサックスも良く歌いもう少し聞きたい感じ。クインテット5曲の中でイチオシ。
#3「ジョーラム」アート・テイラーのドラムにリードされるリズミックな曲。
#4「スウィート・ジョージア・ブラウン」スタンダードのオールデイズ? ラグタイム風のテナーサックス、ドラム、ベースに乗って快調にトロンボーンが駆け抜ける。
#5「ラヴァーマン」ピアノのイントロで始まるスローなバラード。情感豊かなトロンボーンが良い。印象的なベースのソロを受けてトロンボーンのソロが曲を締めくくる。
4管フロントのセプテットの3曲は、全てマシュー・ジーの作曲である。
#6「ジー」4管のアンサンブルで始まる軽快な曲。4管やピアノが順にソロをとり、楽し気な雰囲気である。
#7「キングストン・ラウンジ」アップテンポのトロンボーンのソロがアルト、トランペット、バリトン、ピアノのソロを誘発する。アート・テイラーのドラム(時おり声でも)が煽り立てエンディングに突入する。
#8「ザ・ボーイズ・フロム・ブルックリン」ミディアムテンポでマシュー・ジーのトロンボーンを堪能できる。フランク・フォスターのテナーも優しい音である。優雅なアンサンブルのハーモニーで曲が終わる。
ハードなバップでもなく、ビッグバンドのサウンドを指向したものでもなく、優しげなアンサンブルでありながら、ピリッと各人のソロが光り、マシュー・ジーのトロンボーンを堪能できるアルバムであると思う。