深刻な鬱状態に悩まされ続け1979年ニューヨークの滞在中のホテルの15階から飛び降り、33才の若さで悲劇的な最後を遂げたDonny Hathaway 彼自身は比較的裕福な中流階級育ちだが、生前はGhettoで苦しむ同胞たちを励ますかのようにGhettoの荒んだ現実、自由、希望など黒人社会の問題について歌うメッセージ性ある彼の歌は、多くの黒人層から支持を得ていた。そんな彼のソウルフルな名曲群の中でも一際すばらしいのが、公民権運動の影響によるブラック・パワー・ムーブメントがまだ盛んだった当時の時代を象徴するかのような、同胞達に希望を訴えかけるポジティブなリリックを彼の持ち味である男気と優しさ溢れるソウルフルな熱唱で聴く者を魅了する名曲Someday We'll All Be Free 【映画マルコムXのエンディング曲で使用されたアレサ・フランクリンによるカヴァーなどが有名】この曲は人一倍繊細で情緒豊かな彼らしい曲で、この曲の詩を書いたエドワード・ハワードが精神的にかなり参っていた彼を励ます為に書いた歌詞だと後に明かしている事から、恐らく彼自身自分自身にも言い聞かせるかのようにこの曲を歌っていたのだろう。他にもDr Dre Feat Snoop Doggの名曲Lil Ghetto BoyのHip Hop元ネタとしてもお馴染みのLittle Ghetto BoyとToo ShortのThe Ghetto 1990とCelly Celの Hot Sunny Day 1994などの元ネタで有名なインスト曲Ghettoなどもすばらしい。個人的にはこれら3曲が今作収録曲の中でも特にお気に入りの名曲。さすがに今聴くと古臭さは否めないが、何時の時代でも輝き続ける名曲とはこういった曲のことを言うのだろう。
実は、最初に買ったダニーのアルバムは「EVERYTHING IS EVERYTHING(新しきソウルの光と道)」でした。しかし、硬質な曲が多いという印象が強く、当時は2枚目のアルバムに手が伸びませんでした。 2年ほど経ち、ふと店頭で見かけた本譜には、マービン・ゲイやキャロル・キングのカバーの名が。言葉は悪いですが興味本位で買ってみたら、なんとしなやかでやわらかな曲の多いことか。前出の2曲もカバーという表現が失礼なくらい、見事に自分の曲にしています。今度はすぐに「LIVE」「Extention Of A Man(愛と自由を求めて)」を買いに走りました。 「NU-PO」など、他のアルバムに入っている曲もあるので、「ダニーに興味はあるんだけど…」という方でも、私のように取っ掛かりで買ってみてはいかがでしょう(最初からそういう主旨のアルバムなんですが)。 このアルバムを買った年から毎年、私の中でやさしく鳴り響くクリスマスソングといえば、「-イブ」でも「ラスト-」でもなく、もっぱら「ディス・クリスマス」になりました。