1991年に仏のマイナー・レーベル「セブンス」からひっそりリリースされた本盤、
主人公はシモン・グベールというフランスのドラマーなのだが、ゲスト参加したスティーブ・グロスマンが独り絶叫、血管ブチ切れ状態で吠えまくり、ドン引きする周囲をよそに、美味しいところをごっそり全部さらっていく。
これは、その迫真のドキュメントである。
もちろんエヴァンス派のロラン・フィッケルソンは彼なりに頑張ってマッコイをオマージュしているし、フィル・ウッズ風のクシェだって演奏技術は非常に高いのだ。
しかし、それはあくまで学び取った技量の話。二人のソロがあくまで常人レベルのトレーンの再解釈に留まることを、その直後に素っ頓狂な叫声をあげて乱入するグロスマンのチャルメラが、たちまちのうちに暴きだす。
たった4曲だが、「ナイーマ」以外全部その調子。なんだこりゃ。
もはやフレーズがどうとか、技術がどうとかいう話ではない。
「マジで狂ってる」、全てのリスナーをそうドン引きさせる音の威圧感、風格。
トーンと音圧、フレージングの全てにおいて、スティーブ・グロスマンのそれは紛う方なきマジもんである。
「マイ・フェイバリット・シングス」をみんなで合奏する場に、彼を呼んだから悪いのだ。
ヤンキー同士の喧嘩に助っ人として殺人鬼を呼んでみたら、仲間ともども皆殺しにあっちゃった感じ。
いや、凄いものを聴いた、潜ってきた修羅場の数が違うというのか。
グロスマンにとっても、これは1990年代以降の代表作といっていい出来映えだと思う。
一応型どおり中身の紹介はしておこう。
参加メンバー
Jean-Michel Couchet (ss, as)
Laurent Fickelson (p)
Stephane Persiani (b)
Simon Goubert (ds)
Steve Grossman (ss, ts) ※全曲吹いているがゲスト扱い
収録曲
1. Take Five (14.43)
2. River Bop (6.37)
3. Naima (6.28)
4. Haiti (21.39)