本作のメンバーで誰がすごいといえば、圧倒的にジョー・ボナーである。ソロを取ったときはもちろん、裏でも凄まじい個性を発揮している。彼の演奏は流麗にも関わらず、ほんの少しずつ音の出し方が遅れているために、すごいくらいの美しさとジャズらしさが同居してしまうのだ。
ウディもいつもどおりブラウンとドーハムの中間といった感じの音色で安定した演奏を展開し、ルネ・マクリーンは父親とドルフィーが混ざったような迫力ある演奏を聴かせる。
さらにジョー・ヘンダーソン系ながらよりコルトレーンに近いビリー・ハーパー、トロンボーンとは思えない音の少なさながら、独特の演奏で誰とも似ていないスティーヴ・テューレに、セシル・マクビーはジミー・ギャリソンのようなソロをとり、ややパシパ気味のヴィクター・ルイスもこの調和的な熱気のとでもいった中で、まったく浮いていない。
全員がそれぞれの個性を充分に発揮し、何か分類不可能なテイストのアルバムとなっている。新主流派がより熱く、ストレートに演奏しているといった感じだろうか。ジャケットの地味さとは裏腹の個性的なアルバムである。