1999年6月18、19日ニューヨーク、シアー・スタジオにて録音。トリオのメンバーは、リッチー・バイラーク( p )、ジョージ・ムラーツ(b)、ビリー・ハート(ds)。1970年代にECMで活躍したリッチー・バイラークの実に珍しいスタンダード集である。ライナー・ノートの最終ページには1977年7月にビル・エヴァンスと二人で写っているリッチー・バイラークの写真があって、ビル・エヴァンスを思い浮かべながら演奏していたのが感じ取れる。
10曲中9曲がスタンダード、残り1曲がバイラークの代表曲という布陣である。ピアノについての記述はないが、ぼくの耳にはベーゼンドルファーのように聴こえる。冒頭のコール・ポーターの名曲『What Is This Thing Called Love?』は、C音ルートのパターンにハーモニーを重ねるといういかにもバイラークらしい演奏である。ここからの演奏はかつての師であるレニー・トリスターノに似ている。『Night And Day』や『Autumn Leaves』の演奏は、コード・チェンジをモード的に置き換えている。このあたりキース・ジャレットのスタンダーズの演奏と比べると面白い。
追記として気の毒なので付け加えると、このアルバムのオリジナルのライナーをお読みになっている方は直ぐにピンと来ると思うが、『What Is This Thing Called Love?』は、C音ルートのパターンにハーモニーを重ねているといった説明は、1999年11月3日にオリジナルのライナーを書かれた藤本史昭氏の詳細な楽曲解説を参考にしている。それも知らずに狭い楽理でコメントしている方がいるようだが笑止千万である。おそらくはオリジナルのライナーを読んだこともないのにコメントしていると思われる。まあ、一つもレビューなしにコメントしているくらいだからその程度なのかもしれないが、念のため付け加えておきたい。