ヴィーナス・レーベルから出た数枚のキューンのアルバムは、正直キューンらしいロマンチックで端正なピアニストでは
全くなかったため、このアルバムにも聴く前から一抹の不安がありました。
というのは、全10曲の曲目のうちキューン自身のペンによる曲が2曲しかないと分かったからです。
89年録音というのも、彼がどこに向かっていた時期なのか、なかなか微妙な時期だなと思ってしまいました。
しかしそれは全くの杞憂に終わりました。
全10曲通して、とてもキューンらしいリリシズムに溢れていて、ECM時代の作品が好きな自分も、
素直にこれは傑作だと言える内容になっています。
その後のヴィーナスのキューンと同じ人物とは俄かには信じがたいほどです。
2001年にユニーバサルスタジオで、リマスターもされているので、音の方もかなり良いです。
ヴィーナスと同じオーソドックスなピアノトリオなのに、どうしてここまでの違いが出るのでしょう。
ジャケットもこちらのほうが何倍のセンスが良いと思います。
これを聴いてますますヴィーナスレーベルとは一体何をやってくれのかと口惜しくなってしまいました。