ヴァントのモーツァルトを「堅い」と言って敬遠する人が多いが、私にはさっぱり理解できない。むしろモーツァルトにはピッタリな演奏だと思う。入念な解釈と猛稽古に裏打ちされたアンサンブルは緻密だが、そこに堅さは一切なく、むしろ弦の豊かなニュアンスや管楽器の香り高い響きをも
って、モーツァルト演奏にあるべき全ての要素を獲得している。
39番は第1楽章冒頭から響きの充実度が他とは違う。そして第2楽章など、美の極致である。
40番の第1楽章は遅めのテンポでじっくりと腰を据えた演奏。同じスタイルのブロムシュテット&ドレスデン・シュターツカペレとは比較にならないほど作品への追究が深い。
そして41番。颯爽としたテンポでモーツァルトが書いた全ての音符を着実に音化させる。第4楽章のフィナーレなどまさに圧巻。理想の名演である。