都はるみさんの演歌はしみじみと泣けてくるんだけれど、決して狭いところに落ち込まないのがいいですね。むしろ、その歌声にはすっと世界のどこか広い場所に突き抜けていくような爽快さを感じます。だから、僕は船に乗って海に出ると、ついはるみさんの歌を口ずさみたくなるのです。
このアルバムははるみさんのヒット曲を集めた文字通りの「ベスト・セレクション」ですが、どの曲も素晴らしいです。『アンコ椿は恋の花』『涙の連絡船』『好きになった人』といった元気一杯の初期の作品も、叙情演歌の高みを極めた『北の宿から』『大阪しぐれ』といった曲も、成熟したとても豊かな心象世界を感じさせる『千年の古都』『一番逢いたい人』『古都逍遥』も、僕は全部好きです。