ジャケットからしてかなりコンセプチャルな雰囲気がむんむんと伝わってくる邦題は「目覚めの時」。
結構、メルセデスのアルバムは本人の大写しのジャケも多い中、どこか寂寞としたモノクロな風景は
彼女が歌手として長く歩んできた貫禄すら感じさせられます。
元々は60年代中期からアルゼンチン・フォルクローレのムーヴメントから出てきた歌手ですが、徐々にアルゼンチンの
エリス・レジーナと言えるほど、彼女の鋭い嗅覚でさまざまなタイプの曲も歌うようになり、これは98年の作品です。
ルーツはしっかり持ちながら、ブラジル音楽やロックにまでレパートリーを拡げていく、常に現状に留まらない器の
大きさが破格であり、アルゼンチン音楽の中でも、自分の中で格別な存在なのです。
そんな彼女の中でも、全17曲とかなりの大作である本アルバムは、国内盤も出るくらい彼女の実力が世界でも、
大きく評価されてきた時代のもので、この時、既に64歳だというのが信じられないほど精力的な姿勢です。
なんだろう? 誰もがとりあえず好き嫌いは別にして、とにかくすごい歌手だと思う力量がまずあり、それでいて
伝統音楽に囚われないしなやかさを知ると、ますます聴き込んでしまうのが、彼女の歌だと思います。
作詞作曲はしない。そういう意味でもエリスとの共通点は多いです。
アルゼンチンを代表する国民的な女性歌手だったということは疑いの余地がありません。