ジャズは、アフリカンアメリカンが作ったアメリカの音楽だが、ルーツは
アフリカにある。奴隷船で連れてこられたアフリカ人が、綿花の重労働で哀歌
(ブルース)を歌い、ニューオリンズの練り歩きブラスバンド(器楽)が北上する
などし、ミックスされて、ジャズになっていった。
では、そのルーツであるアフリカの音楽を主体とした音楽を現代的にアレンジすると
どうなるか。ということでこのアルバムがある。
聴いた印象は、日本だと「オルケスタ・デル・ソル」や「東京スカパラダイスオーケストラ」
の雰囲気に近い。直接的には「マハラティニ・マホテラ・クイーンズ」の音楽がある。
ブルースという要素を抜いた(というよりそれを絶対の前提としない)アフリカン・
ミュージック(ジャズ)は新鮮で、魅力がある。メンバーも通常のジャズも演奏する
ジャズメンたちなので、基本の演奏力は高く、リズムは正確にキープされ、アレンジも
モダンでキレがいい。彼らの音楽性の高さは、安心して音楽に耳を傾けられる原因になっている。
歌われているのは、「密告者」「密輸製造」「牢獄暮らし」「炭坑夫」「寝取られ男」
などで、曲想は陽気でハッピーな世界。アフリカの光が明るく降り注いでいる。
こういう曲(歌。特に歌詞)を聴くと、逆にアメリカで生まれ発展したジャズが、
非常に洗練されたものであることがわかる。
録音は1992年。南アフリカ共和国のヨハネスブルグで行われている。