ヴェンダースファンの間でも、この作品の評価は低い。『夢の果てまでも』を評価しないのはまあ仕方ないにしても、「『夢の果てまでも』以降云々」と一括りにされ、『エンド・オブ・バイオレンス』は議論の的にすらならないのだ。「『さすらい』がイチバン!」といっておけば波風立たぬことは知っているが、これほど緻密に計算しつくされて完成した映画を他に知らない。
ここでは登場人物の全てが象徴的な役割を担い、それぞれの顛末やカメラワークまでがその役割に基づいて設計されている。例えば研究所でガブリエル・バーンを捕らえるカメラがいつも浮遊しているのはもちろん監視下にあることを露骨に示すものだし、反対に父とのシーンでは常に安定したフィックスである。そこにあるタイプライター!をはじめ、脚本はもちろんのこと撮影、美術、音楽等全ての要素がテーマを補強すべく主張している。
「その理論整然としたスタイルが嫌なのだ」という人もいるだろう。「映画の魅力ってそんなものではないだろう」と。好き嫌いは無論各々の自由だが、この作品、もう少し高く評価されて当然と思うのだ。
最後に内容に関して一言。絶望的な状況にある人間(人類)が、世界を変えるのではなく世界に対する自分のスタンスを変えることによって平安を得る、このラストを私は涙なくして観れない。