◆ C.ヴェローゾ(vo)
◆ ジャキス・モレンバウム(cello)他
【Rec.c.1994】
♪カエターノ絶頂期の傑出した1枚だと思うのだが、にしてはレビュー欄がお寒い…要は SSW としての彼は稀代の天才だが、純粋にいちヴォーカリストとして見た場合には―てなことなのだろうか!?イヤゝそっちの力量だって並大抵じゃないっしょ。その年齢を一切感じさせない(当時50過ぎ)、瑞々しくも芳醇な天鵞絨(ビロード)みたいな唄声も、言葉の壁を押し退けて人の胸を打つ、歌曲に於ける抜きん出たインタープリテイション(解釈/表現)能力も、依然として現役バリバリの状態なんである!!
♪1つにはそのマテリアルも関係あるのだろうか―というのも当盤はカエターノ初の全編スペイン語によるカヴァー作品。ご存じのように中南米の諸国は、圧倒的にスペイン語を公用語とするケースが多く、ブラジルはほぼ唯一の例外であるが為に、当時は“スペイン語圏市場に向けた一種の色物アルバム”などと揶揄されることも少なくなかったと聞く。でも実際に耳を通せば、そんなコマーシャル至上主義とはハッキリと袂を別つ、よく吟味された演目を取り揃えた、上質かつ普遍的なその内容に驚かれるに違いない。
♪出自はキューバ、メキシコ、パラグアイ、ベルー、プエルトリコ、ヴェネズエラ、アルゼンチンと幅広く、発表年も1860年の#14から1992年の#8までと一世紀もの長きに亘る。レクオナや著名なボレロ作家のアウグスティン・ララの銘品を含むそのラインナップは、彼の魅惑のハイトーン・ヴォイスや、クラッシィでいながらモダンな風合いも感じさせる卓越した編曲とも相俟って、甘美ななかにも一抹の愁いを滲ませる―そんなラテン音楽ならではの醍醐味を十分満喫させてくれる。とりわけ“南米のティノ・ロッシ”とでも称したい、蕩けるようなファルセットを響かせる#12といったら…