皆さんがお書きになっているように端正で上品な演奏ですが、同時に、「描写音楽」の面白さ、そしてヴィヴァルディの「ロマン派音楽」に通じる魅力を表現した演奏です。「春」の第三楽章など、そのテンポの自在の動かし方はロマン派のヴァイオリン協奏曲に通じるものすら感じますし、また、全体が上品で澄んだ弦楽器の音色(これはやはりモダン楽器ならでは)で、私にはいつも「うっとうしく」(まあそういう雰囲気を狙ってくつられている曲だからしょうがないけど)感じる「夏」もとても聞きやすいし、しかしダイナミックさは失われていません。「秋」の仮のリズム感も「冬」の第3楽章の、厳しさの中にもある種の爽快感を感じさせる演奏も快い。
全体的に、この「四季」、標題音楽として、各楽章につけられたソネットの内容をかなりわかりやすく表現しているようにも思えます。実はCDに寄せられた故志鳥栄八郎氏の解説がまた面白く、自分のヴェニス訪問の思い出にはじまり、楽曲解説では事細かに詩の内容と音楽とを結びつけて紹介している(「夏」で、標題音楽には様々な描写があるけど、「ハエ」をテーマにした曲はこれしか知らない、と書いているのはちょっと受けた)。私の「四季」との出会いは、中学生の音楽の授業で、クラシックの面白さを教えてくれたのがこの曲でした。その時もやはり音楽につけられたソネットの内容と音楽を結びつけて楽しんだことを思い出します。学校の授業や、子供さんに聞かせるCDとしても、解説ともども中々有効な一枚ではないかと思いましたし、私ももう何十年も前の少年の日々を思い出しました。