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バッハが書いた受難曲は5曲あったそうだが、現在聞くことができるのは『ヨハネ受難曲』と『マタイ受難曲』の2曲のみである。
『マタイ』は、新約聖書に収められている『マタイ伝福音書』を元にしたオラトリオで、バッハは3年がかりで作曲したという。通して聴くと3時間近くかかる超大作で、本盤は3枚組で収録されている。イエス・キリストの受難劇という宗教的なテーマを扱い、管弦楽に声楽を加えた編成である。規模の大きさ、劇的な構成力、宗教的な精神性の高さにおいて、まさに特筆の作品である。
第1部の開始部分では、キリストが十字架を背負いながら足を引きずって歩くさまが通奏低音で奏でられる。一転して嵐のような激しさに変わり、キリストが捕らえられ、弟子たちが逃げるところまでが描かれる。第2部は、キリストに対する尋問に始まって、キリストの永遠の安息を祈る場面まで。特に後半になると、キリストが処刑されるまでの緊張感がひたひたと迫ってくる。決定版といわれているカール・リヒター指揮の58年盤だ。(新井由己)
メディア掲載レビューほか
リヒター31歳の,極限までぜい肉をそぎ落とした迫真の名演。冒頭のひきずるような重苦しい持続低音に始まり,ヘフリガーの絶唱に導かれて壮大なドラマが展開する。このあまりに強い緊張感がゆえに,イエスの受難後の安らかさが,涙をさそうのである。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)