シューベルトの Die große = ザ・グレートは筆者の最愛のシンフォニーであるが、その魅力を教えてくれたのがフルトヴェングラー & ベルリンフィルの演奏 (ただし42年ライヴの方) だった。現在では、いささか熱に浮かされたような大戦中のライヴ盤よりも、大聖堂のごとき佇まいを持ちながら石に照り映える陽光の温もりをも感じさせる当盤 (51年スタジオ録音) を手にとることが多い。本家グラモフォンのCDでは弦の音色がのっぺりして管楽器と溶け合わない印象だが、平林氏の復刻によるグランドスラム盤ではヴァイオリン群のまわりの空気の振動が感じられ、管楽器ともちゃんと呼応しているのがわかる。そして管楽器の妙なる調べ…とくに第1オーボエ (シュレーフォークトだろうか?) の清澄で突き抜けるような音色には感嘆しきり。
平林氏は後に、同じ51年録音をオープンリールテープから復刻し、GS-2152として再発されている。そちらも勿論良い音だが、個人的にはLP復刻盤の方が、音像が引き締まって焦点もはっきりしているので好きである (カップリングのハイドン88番ではこの音の明確さがさらに活きている)。復刻の優劣ではなく、あくまで個人の好みの次元の話ではあるが、敢えて中古でグランドスラム旧盤 (GS-2107) を求めた甲斐はあったというもの。