評論家が下すような公的な評価と、普通の音楽ファンの評価が噛み合わない時って
ありますよね。ビートルズなら「Sgt.Pepper's」と「Rubber Soul」、マイルスなら
「Kind of Blue」と「1958マイルス」、ビル・エヴァンスなら「Waltz for Debby」と
「At Shelly's Manne-Hole」の関係などなど。
このアルバムは、キースにとっての「Rubber…」、「1958…」、「Shelly's Manne-Hole」に
あたる作品ではないかと。
リリースはかなり後でしたが、収録はトリオ結成の約6年後。ノリにノっていた時期
だったのか、数日後に行われた公演も二枚組でリリースされていますが、そちらはコンセプト
重視でやや冗長な印象があります。
本作は変に肩肘張ったところもなく、2.のようなバラードでさえ楽しく聴かせてくれます。
OPとEDも軽快にキメてくれますが、特にEDの「How About You?」。ピアノのカデンツァに
続きテーマが始まる時の「やった!」感、唐突な終わらせ方のカッコよさなど、私はジャズの
「粋」を本作で学びました。
超有名なスタンダードが収録されていないのであまり語られる機会がありませんが、
普段コワモテの先生が相好を崩したような、愛すべきアルバムです。